レビュー
てる

てる

3 years ago

3.0


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映画大好きポンポさん

映画 ・ 2020

平均 3.8

この作品は友人が大好きなのだ。理由はわかる。アニメーションはかなりハイクオリティだし、アニメーションだからこそ出来る技法を使っているし、演出は巧みだ。紛れもなく面白いのだとは思う。 ただ、私には少しキツい。 というのも私は映像に関わる仕事をしているのだ。もっと言うと、映画のスタッフをやっている。その私からすると、映画作りってそんなに簡単でもないし、そんなに感動的でロマンチックなもんでもないんだよなっと思ってしまうのだ。 編集の段階で色々やりたいというのはわかる。だが、撮影段階で編集のことを頭に入れながらカット割りとかをするもので、迷いに迷った挙げ句、追撮。 追撮は本当に予算がかかる。同じスタッフを集めるのは難しいが、別のスタッフでも撮れなくはない。だけど、キャストはそうはいかない。キャストのスケジュールを取るために、相当奔走しなければならない。なので、キャストを呼ばなければならない追撮はかなり稀だ。 この作品はハリウッドが拠点なので、撮影方法は全然違うとは思うけど、日本で追撮をしまくってしまうのは庵野秀明くらいなもんで、そうならないように熟考しておくもの。しかも、編集が全然進んでいないような段階で追撮なんて言ってしまうのは相当ヤバい。 日本では絶対に許されないだろうし、ハリウッドならクビにされるだろう。 それに、追撮をしたいと言われて、笑いながらGoを出してしまうようなプロデューサーと仕事をするのは、スタッフとしては辛い。というのも、かなり振り回されそうと思ってしまうからだ。 編集のシーンは面白い演出をしていた。パソコンをカタカタしているだけのシーンのはずなのに楽しめた。だけど、実際は監督自ら編集する人は少ない。編集の人がある程度画を繋げて、監督に見せてから、変えていく。なので、自主制作かよっぽど編集好きな人でもない限り、監督が編集ソフトを触ることなんてない。 それに、編集するにあたって、そこまで苦悩しながら切っていく人はそういないだろう。もっとドライに切っていく。映画の人はある程度ちゃんとカット割りを考えてくれるが、ドラマの監督はカット割りは考えてはいるが、後で編集でどうにでも出来るように撮っていく。なので、使わない余分なカットなんて山ほどあるわけで、現場で苦労したからなぁなんとか使いたいんだよなぁなんて言いながら迷う人は少ないのではなかろうか。 一番納得出来なかったのが、最後のセリフだ。 「90分に収められたことですかね」 それってプロデューサーのポンポさんのためだけに撮ったってこといいんですか? 私も映画好きであるので、長尺の映画を観るのが辛いのはよくわかる。確かに90分という尺の映画は手頃で観やすい。だけど、名作は長尺の作品が多い。 映画界の常識として、長い作品は客が入らないというのがある。だから、興行収入を気にして、尺を短くするように、プロデューサーがテコ入れしたりするのだ。 しかし、監督も意地がある。誰の邪魔も入れず、自ら編集した作品が、いわゆるディレクターズカット版という形で世に出されるのである。 ジーンくんの場合はどうだろうか。作品のクオリティを上げるためにシーンやカットを切ったのかと思っていたが、あのセリフを聞くに、作品のクオリティというより、90分以内に収めるためにバッタバッタと切っていったように思えてしまう。 作品のクオリティを上げるために90分に収めたということなのだろうか。全くない考えとは言いきれないが、短い尺にすれば作品のクオリティが上がるというわけではないだろう。 結局、あのセリフは伏線回収のあざといセリフにしか感じない。ポンポさんのためだけに作った作品だからどんなことよりも90分に収めるというのを最優先にしたように思える。私はどちらかというと、長い尺になってしまったが、評価されて、映画賞を総なめしたくらいの方がいいと思ってしまう。 ジーンくんはあんなに悩んで悩んで、せっかく撮ったカットやシーンをバッタバッタと切ったのは、結局は尺を気にしてただけかよなんて感じてしまう。本当は残したかったシーンとかカットなかったの? それとも、敬愛するポンポさんが求める作品を撮って、賞まで取っちゃって、それを全部ポンポさんに捧げる愛の話しだとしたかったのか。 腑に落ちない。 でも、あれこれ思ってはいるが、青春映画としては面白いのだ。悩んだ末、結果もバッチリ残して、大団円で終わるってのはハッピーなのだ。最後のセリフも私が腑に落ちないだけで、他の人からしたら、なんて良いセリフなんだろうと思えるかもしれない。 私が知るようなリアルな業界の裏話を物語にしても面白いはずがないし、それを物語にするならば、脚色は絶対に必要なのだ。だから、これはこれとして受け入れるのが正しいのだろう。 んー。 業界に入る前に観たかったなぁ。 でも、この作品を観て、業界に入ろうとしてる人は思い直した方がいいよ。