レビュー
【リバー・フェニックス愛】 謎の死を遂げる人気俳優、それを受け入れ成長する少年の物語。監督自身の経験から着想を得たという本作は、若くして天逝したリバー・フェニックスへの監督の溢れる愛そのもの。随所に描かれるオマージュも温かい。 ◆概要 監督:「Mommy マミー」グザビエ・ドラン 出演:「ゲーム・オブ・スローンズ」キット・ハリントン、「ルーム」ジェイコブ・トレンブレイ、「LEON」ナタリー・ポートマン、「リチャード・ジュエル」キャシー・ベイツ ◆ストーリー 2006年、ニューヨーク。人気俳優のジョン・F・ドノヴァンが29歳の若さでこの世を去る。謎に包まれた死の真相について、10年後、新進俳優ルパートが、ジョンとの100通以上の手紙を出版。さらに取材を受けて、すべてを明らかにすると宣言する。 ◆感想 手紙で繋がる二つの人生。どちらも俳優である事の稀有な人生、そしてとあるマイノリティ。まさに監督・脚本であるグザビエ・ドランの人生そのもので、その世界観・頭の中ににどっぷり浸かるような2時間。彼の陶酔する俳優へのオマージュも。 ◆手紙 ファンレターに返事が来て、そこから憧れの人と文通が始まったら?誰もが一度は夢見る、そんなワクワク感に始まり、その軸の周りで、裏切り、いじめを経験しながら、大切な母との絆も築いていく。そんな1人の少年の成長物語が描かれる。憧れの人にたくさんのことを導かれながら、やがて自分もその人自身に成り代わって行く。憧れが生きる力に変わっていくような、そんなエネルギーを感じる映画だった。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆LGBT LGBTである事を隠し通して生きたジョン。マネージャーから「私は嘘つきにはならない」と解雇されたように、最後の手紙で自分らしく生きる事を、彼はルパートに伝える。そして「僕も大切なものを手に入れた」と、ルパートが相棒のバイクにまたがるラスト。LGBTである事を隠す事なく、自分らしく生きる事を、この映画は通して説いていたように思う。監督のドランも自身がLGBTである事を告白しており、この映画が彼の心の内をそのまま映し出しているような、そんな風に解釈できると思う。 ◆ラストシーン ルパートがお迎えのバイクにまたがるラストシーン。どこかで見た事のある構図だと思ったら、「マイ・プライベート・アイダホ」のビジュアルにもなっている、キアヌ・リーブスとリバー・フェニックスのツーショットと酷似(下記トリビアに詳細)。リバーがLGBT役であるこの映画。このオマージュは、LGBTへのそんなシンパシーであると同時に、監督の溢れるリバーフェニックス愛が映像化された一つの形だと思う。 ◆死の解釈 とすれば、本作で結局謎のままのジョンの死は、ドラッグで夭折したリバーに対する監督の想いなのではないか。ルパートがジョンの死を、“ミスだと信じる”と語ったラストは、リバーの死が自殺ではなくミスだったと信じてやまない、ドランの想いそのもののように思う。そして映画のタイトルの通り、ジョンFドノバンの死と生は、その死を受け入れたルパートが、ジョンを自分の中に生かし続け、憧れた道を自身で力強く進んでいく姿そのもの。もちろんそれは、監督がリバーの死を受け入れ、今俳優としても活躍するドラン自身の、リバーへの最高の敬意の表れだとも思える。劇中「スタンド・バイ・ミー」がかかったのも、そう考えれば頷ける。 ◆ 妄想がどこまでも突っ走る解釈になったけど、映画として、二つの母子のそれぞれの絆が心温まる、美しい構図の映画。ジョンのドラマを発狂するかのように(笑)楽しむルパートと、それを笑顔で見つめる母の姿がとても微笑ましかった。色んな解釈ができる映画は、それだけで素晴らしい。 ◆トリビア ○ 本作は、当時8歳だった監督のドランがレオナルド・ディカプリオにファンレターを書いた自身の思い出から着想を得ており、ルパートは幼少期のドラン自身がモデル。(https://www.phantom-film.com/donovan) ○ アデルの名曲「Rolling in the Deep」が流れるオープニング映像。監督のドランは過去にアデルからのラブコールで大ヒット曲「Hello」のPVを監督した。(https://eiga.com/news/20200311/4/) ○「女神の見えざる手」のジェシカ・チャステインも出演していたが、尺の都合で全カットになった。(https://www.cinemacafe.net/article/2020/03/06/66149.html) ○お迎えのバイクにまたがるラストシーンは、亡き名優リバー・フェニックスへのオマージュ。(https://www.cinemacafe.net/article/2020/02/19/65890.html)
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