レビュー
すべてのシーンに、上手いなぁ、上手いなぁと感心し続けていた。 主役のチャン・ドヨンも、ソン・ガンホも凄い演技だが、登場人物のすべてが、とにかくどこか感じ悪い。 ありふれた日常の。韓国の密陽(ミリャン)という街並みとそこに生きる人たち。 前半からとにかく笑顔で親切な中にも、腹を立てるほどではないけどムカつく程度の「嫌な感じ」が挟み込まれる。 それは、本当に主人公の言動も含め。 何なら劇中で語られる「夫」すら、かなり嫌な感じである。 あのダラーっと身体をへたらせた覇気のない子供の誘拐から、物語はより深い闇の中にどんどん入り込んでいき、この世界に何気なく、そしてありふれている狂気とか絶望が淡々と顔を出してくる。 その辺りが実に落ち着いて、これ見よがしではなく、また、説明的でなくじっくりと溢れ出してくる演出に感心。 実に映画的。 「密陽」という街映画として。そしてそこに生きる人たちの生活や、少しずつ人間が抱えている苦しみから、どうやったら救われるのか。 ということを深く考えさせられる。 神によって救われるのも。愛によって救われるのも。そもそも、が神も愛も矛盾している。 それ故にあまりにも、現実があまりに苦しい。それを実に「詩的に」描いたことで、そして何より強度な「映画的表現」で見せてくれて、大変嬉しくなった。
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