レビュー
東野圭吾の原作については未読だが、もしこの通りだとすれば、少しツメが甘いような気がする。 というのは、ヒトDNAからの人物推定(本作では「DNAプロファイリング」という用語を用いている)と、「DNA型の照合」というのを混同しているような気がするのだ。前者だと、膨大なサンプリングとサンプリングされた人間について詳細なデータ(例えば、IQとか情動、情緒など)を元に行うシミュレーションであり、それこそ本作で描かれたスパコン的なシステムが必要であろうが、後者であれば重要なのはサンプリングそのものだけであり、照合プログラムは少しスペックの高いPCクラスで十分なはずである。 冒頭で描かれた連続幼児殺害に関しては、前者の考え方であって、このエピソードについての丁丁発止のやり取りが納得できるし、スピード感もあって良かった。この調子で、何か凄い事件が起こるのだなと思うと共に、期待感も高まる。 しかし、それからが良くない。 結局、本作のシステムは後者の考え方であって、現在の警察庁がもはやシステム化している。問題となるのはどれだけ完全にサンプリングできるかなのだ。当然、プライバシーの問題を孕むことになり、犯罪者しか登録でされていない。本作では、そのための法案を通すというのが、今度は映画のキモとなってくる。 さらに物語が進行すると、生物学的な分野から大きく外れ、精神医学、人間行動科学、さらには人文科学的な分野にシフトしはじめ、ラストに至っては「神学」とか「哲学」の世界に足を踏み入れている。 正直、ついて行けなかったし、連続殺人をするほどの動機なのかも疑わしくなり、単なるサイコキラーではないかとさえ思えてくる。この通りの原作だとしたら原作に難ありであろう。 監督と各演技者の力で、欠伸など出ないようなつくりにはなっているが、全てにおいて納得できない珍作であると思った。
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