レビュー
【原題と邦題は“最強のふたつ”】 原題の『untouchable』の通り、2人のアンタッチャブルな部分が映画の根底にあり、邦題の通り、ふたりが2人でいる事の最強っぷりが終始心地いい。社会的メッセージも尊い、完成度の高い映画。 ◆概要 実話を基にしたヒューマン・コメディ。監督は、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュのコンビ。主演は、『唇を閉ざせ』のフランソワ・クリュゼ、『あしたは最高のはじまり』のオマール・シー。 ◆ストーリー 不慮の事故で全身麻痺になってしまった大富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、新しい介護者として、スラム出身の黒人青年ドリス(オマール・シー)を採用することに。すべてが異なる二人はぶつかり合いながらも、次第に友情をはぐくんでいき……。 ◆感想 2人の最強な笑顔と友情が、見ていてとても微笑ましく、あっという間の2時間。体が不自由で穏やかなフィリップの“静”と、スラム出身のドリスの“動”が、次第に融合して行き、絶妙なバランスに昇華していく様は、映画としてとても芸術的だと思う。 僕はフィリップの、ドリスといる時に溢れる、そしてとても穏やかな笑顔が好きです。あの笑顔が色んな意味でこの映画の全体の雰囲気を形作ってると思う。 一つは、大富豪とスラム出身者とのステージの違いを、穏やかに繋ぐ役割り。はじめは誰にも笑顔を見せなかった大富豪が、あの笑顔一つで豊かな人間味溢れ、スラム出身者とバディを組んでいく様がとても自然に見えた。 もう一つは、身体が不自由な障害者と、身体的には申し分ない健常者との、自由度の違いを繋ぐ役割り。自由度が違っても、2人でいれば最強の存在になれる、そんなこの映画のメッセージの根幹にあの笑顔があるような気がした。 ◆以下ネタバレ◆ 原題が『untouchable』なのにも注目したい。ドリスが素性を始めて明かした時、フィリップが決めたのは彼の解雇。家族の事をそれまでアンタッチャブルとしてフィリップに明かさなかったドリス。直接的には描かれていなかったけど、そんなドリスとその家族との幸せを願ったフィリップのあたたかい決断だったと思う。そしてフィリップの文通相手という、フィリップにとってのアンタッチャブルな存在に、ドカドカとマイペースで事を進め、キューピッド役を務めてしまうドリス。お互いのuntouchableな部分を、お互いの思いやりの限りで触れていき、それが揺るぎない友情へと変わっていく。そんなこの映画の根幹が原題に表現されていたと思う。 同時に、邦題で最強のふたりとつけたセンスに脱帽。2人が2人で一つであり、そこに最強の人間味が溢れるこの映画の、原題を捕捉する素晴らしいタイトルだと思う。 また映画全体を通して、障害者と健常者の距離感を絶妙にゼロにできていると思う。“やってあげてる感”一切なく、自然体で付き合うドリスに、お金だけでなく、絵画や音楽の知識が報酬として授けられた職業紹介所でのシーンがとても好きでした。障害者と健常者の一つのあるべき関係性、社会的に大事なメッセージを内包した素晴らしい映画だと思う。 最後に何と言っても驚きなのは、これがフィクションではない事。エンドロール前にクレジット的に2人の実写シーンがあり、フィリップ本人の黒人感の無さに少し驚いたものの笑、事実に基づいたものとは到底思えないほど、上述の通り、映画として芸術的な完成度だったと思う。まさに脚本含め製作側の圧巻のパフォーマンス。 とても素晴らしい映画でした!
いいね 60コメント 0


    • 出典
    • サービス利用規約
    • プライバシーポリシー
    • 会社案内
    • © 2024 by WATCHA, Inc. All rights reserved.