レビュー
てっぺい

てっぺい

4 years ago

4.0


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ラストナイト・イン・ソーホー

映画 ・ 2021

平均 3.7

2021年12月11日に見ました。

【爆発ホラー映画】 夢の中の恐ろしい出来事が現実になったら…?ギミックだらけの不思議な映像美に酔いながら、見ているこちらも錯綜していく。随所のこだわりで、監督の天才ぶりが爆発している一本。 ◆トリビア ○2020年9月に死去したダイアナ・リグと2020年10月に死去したマーガレット・ノーラン(いずれも007シリーズボンドガール)の最後の映画出演作。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ラストナイト・イン・ソーホー) ○エロイーズとサンディが鏡越しに入れ替わったり、ダンス中に入れ替わるシーンがあるが、CGは不使用。監督も種明かしをするつもりはない。(https://news.yahoo.co.jp/articles/5ad515dadbcaba39cdf0b68ce1e399dd14bb539a) ○エロイーズがクラブのクロークでコートを預けるシーンでは、奥に全く同じセットを作り、鏡越しのように見せている。鏡越しに映るクローク係は「ハリー・ポッター」シリーズのフレッド&ジョージ・ウィーズリーを演じた双子の兄弟。(https://jp.ign.com/last-night-in-soho/56248/news/) ○ 夢の中でエロイーズがサンディとシンクロするというアイデアは、監督の実体験から着想を得ている。(https://theriver.jp/lnis-edgar-wright-interview/) ○エドガー・ライト自身も60年代好きでロンドンでの生活経験があり、エロイーズは監督の分身でもある。(https://news.yahoo.co.jp/articles/5ad515dadbcaba39cdf0b68ce1e399dd14bb539a) ○『愛なき世界』『ユー・アー・マイ・ワールド』『恋するハート』など、美しいメロディの奥に深い悲しみが歌われている曲を意図して使用している。(https://bunshun.jp/articles/-/50279?page=3) ○本編に登場する「インフェルノ」というバーは、ホラーの名作、ダリオ・アルジェントの『インフェルノ』へのオマージュ。(https://news.yahoo.co.jp/articles/5ad515dadbcaba39cdf0b68ce1e399dd14bb539a) ○ライト監督は、今後自身初の音楽ドキュメンタリー『The Sparks Brothers』の公開、そしてディストピアSF『バトルランナー』(87)のリメイクが控える。(https://news.yahoo.co.jp/articles/5ad515dadbcaba39cdf0b68ce1e399dd14bb539a) ◆概要 【公開】2021年12月10日 【原案】エドガー・ライト 【監督】 「ベイビー・ドライバー」エドガー・ライト 【出演】 「ジョジョ・ラビット」トーマシン・マッケンジー 「クイーンズ・ギャンビット」アニヤ・テイラー=ジョイ 「ターミネーター:新起動/ジェニシス」マット・スミス 「ゲーム・オブ・スローンズ」ダイアナ・リグ ◆ストーリー ファッションデザイナーを夢見るエロイーズはある時、夢の中できらびやかな1960年代のソーホーで歌手を目指す美しい女性サンディに出会う。その姿に魅了された彼女は、夜ごと夢の中でサンディを追いかけるようになり、次第に身体も感覚もサンディとシンクロしていく。ある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃、さらに現実では謎の亡霊が出現し、エロイーズは徐々に精神をむしばまれていく。 ◆ギミック エロイーズがクラブでクロークに預け、サンディと鏡越しに向き合うシーン。ジャックとサンディのダンスにエロイーズが巧みに代わる長回し。三面鏡や幾重にも繋がる鏡越しにエロイーズやサンディが共存する不思議な映像美。エロイーズがサンディとシンクロするこの映画ならでは、まるで鏡の迷路に自分も迷い込んだような感覚で、食い入るように見てしまう映画前半のギミックが素晴らしかった。 ◆エドガー・ライト その鏡迷路に迷い込んだ夢見心地から、次第に話がサスペンス、サイコスリラー、そしてホラーへと、色んな要素に変わっていくのも絶妙。ちなみにえげつなく人が死んでいくのは60年代のイタリアで「ジャッロ」と呼ばれたジャンルらしい(ここにもライト監督の60年代へのこだわりが感じられる)。さらにはサンディが実は殺人鬼で、ゴースト達はエロイーズに実は助けを求めていたという発想の転換。前述の通り、60年代の音楽(さらにその音楽の歌詞は深い悲しみを綴るものばかり)に60年代の映画へのオマージュもたっぷり盛り込む徹底ぶり。原案から映像としてここまで作り上げたエドガー・ライト。度肝を抜かれた「ベイビー・ドライバー」のオープニングも記憶に新しいが、この人は天才以外の何者でもない。 ◆ラスト エロイーズが踊るオープニングと同じ画角で登場する、ファッションショーというエロイーズの第一歩。その意味で映像としても、エロイーズが元の正気に戻った事を表現。一度もなかった母親の霊の微笑みも印象的だった。そして、夢の中で一方的にシンクロする事しか出来なかったサンディ。殺人鬼と成り果てた彼女は、初めてエロイーズの世界に霊として現れた時、その姿は希望に満ちてクラブの門を叩いたあの頃のサンディで、見事にその意味で今のエロイーズとシンクロし、二人は鏡越しに手を合わせた。ホラー映画には似つかわしくないほど、素晴らしいラストでした。