レビュー
レビュー
ジュネ
star2.5
2020年16本目は、世界的ベストセラーをめぐり地下に監禁された翻訳家たちの思惑が絡み合うミステリー、『9人の翻訳家』。 ------------------------------------------------------------ 序盤からかなりスローテンポで話が遅々として進まないため、退屈に感じる点が多いのは事実です。また、本作は犯人が誰なのか?を主眼とした「フーダニット」としての魅力は少なく、お話の展開からすると真相はあまり意外性がありません。しかし、犯人が何故犯行に及んだのかを明らかにしていく中盤以後の「ホワイダニット」に関しては、十分楽しめるパートに仕上がっていました。 ------------------------------------------------------------ 時間軸を現在・過去・大過去で交錯させながら描いて単調さを抑えたり、「そんなのどう考えても無理でしょ」という矛盾をあからさまに示しておきながら、それを後からちゃんと論理立てて説明するシーンを挟んだりと、サスペンスとしての面白味を感じられたのは好印象。幕切れも安直な「天才犯罪者礼賛」ではなく、むしろ虚しさを印象づけるラストカットになっていて、余韻を残すのに一役買っています。 ------------------------------------------------------------ ただ、せっかくのクローズドサークルが物語上何ら効果を発揮しておらず、終いには遮断された地下室よりも外で起きた出来事の話が大半を占めるため、何の意味があったのかが全然分からなくなってくるのは相当痛いです。地下での緊迫感あるやり取りや、互いの思惑が交錯しての騙し合いを期待していた身としてはガッカリ。 ------------------------------------------------------------ あと「本」や「音楽」を主役にしてしまうと、どうしてもその作品の素晴らしさを映像で伝えなくてはいけなくなるんですが、これが相当難しいと思います。本作もまたテキトーな誉め言葉で形容するだけになってしまっていて、結果として件のベストセラーが「ハリボテ」に感じられるのが残念です。
81