レビュー
ロアー

ロアー

5 years ago

4.0


content

ある船頭の話

映画 ・ 2019

平均 3.1

2019年11月30日に見ました。

オダギリジョー監督・脚本の本作、舞台挨拶付上映に行ってきました。 上映後、監督の希望であるティーチイン方式の舞台挨拶の情報を交えつつの感想です。 船と川と小屋しか出てこない、でもそんな映画を作りたかったと語っていたオダギリージョー監督。 司会の方が言っていたように、シンプルなのに伝えられてくる情報量はとても多い作品だった。その情報というのは、できごとの裏にある事実を読み解くとかメタファーの意味を分析するとか、そういうロジカルに解き明かしていく情報じゃなく、もっとメンタルな情報を直接心で読み取っていくような、そんな国語的な作品だった。 毎日聞こえてくる工事の音、「橋ができたら便利になる」と口々に言う客たち。そんな雑音を、トイチは川の流れにように穏やかに受け入れているようで、内心、爆発するような葛藤を抱えている。 新しいものが生れる中で不要とされるものが必ず出てくる。 そして、自分がなりたいと望むような人間になるのはいかに難しいことなのか。 船頭という時代遅れの存在を主人公に置きながら、目まぐるしく新しいものが生れてくる現代、誰かのために生きることをしなくなった現代への問いを投げつけられた作品だった。 行き場を失くした者たちはどこへ行くのだろうか?最後の終わり方を予感した途端、何だか急にブワッと感情がこみあげてきて目が潤んだ。 エンドロールの映像は最初から考えていた訳じゃなく途中で思いついたそうだけど、あの映像を観ている最中にすべての感情が押し寄せてきたので、本当にピッタリな映像だったと思う。 そう、話も素晴らしいけど映像もとにかく素晴らしい作品。 撮影前日、全部絵コンテ書いていったのに結局現場では撮影監督のクリスの意見もあるし、そうすると色々狂ってきちゃって結局書いたの無駄になったけど、それこそクリスと自分の共作だから~なんて言ってましたけど、本当にひとつひとつのカットに心が宿ってる美しい映像でした。 でも、今後は絵コンテとか書かずに現場のノリでやると思うとも言ってましたね(あと今回、スクリプターがいなかったという、え~な話とかも) 自らも俳優なので、役者の演技が100%理解できるというお話も印象的だった。ベテラン俳優だって調子いい日と悪い日がある訳で、あ、この人のここの演技良くないなぁ~(ここの映像は使えないなってハッキリ言ってた)ってなると、その部分をカットすることになってまた流れが狂う。 何かホント、改めて映画作りって大変・・・でも、役者の目からみた合格点の演技しかない映像で構成された映画って思うと、すごくありません? そして一番印象的だったのが、近頃メジャーな作品だとか、分かり易く台詞で説明するだけで人物が描かれていない作品が多いって話。 役者としてもそんな作品ばかりだとつまらないし、スタッフもそうじゃない作品に餓えてたって話を聞いて、それは観客としても最近特に感じていたことだったので印象的でした。 たくさん観れば観るほど慣れちゃうのか、世間的には面白かったって言ったけど別にそこまでな~っていう作品の割合が増えてきちゃって、しばらく映画観るのお休みすべき?なんて思ってたりもしたから、偶にこういう作品に出合うといいカンフル剤になりますね。 そう感じる作品って、大抵新人監督の作品だったりが多い気がする。 その他、キャスティングについてなどなど、ここだけの話でSNS禁止なんて話が大半過ぎて、どこまで書いてよかったのか見失ってるけど、何だかだ50分位話してくれてたかな? 俳優と監督、多面的な立場からの貴重な話を、赤裸々に聞けたとっても意義のある時間でした。