レビュー
【音楽×巨匠の映画】 60年前の作品を忠実にリメイク。スピルバーグ初チャレンジというミュージカルは、目と耳が喜ぶ多幸感シーンが満載。前作との違いに注目すると、監督が何をしたいのかが見えてくる。 ◆トリビア ○ 第94回アカデミー賞作品賞&監督賞含む主要7部門(助演女優賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、録音賞)でノミネートされた。(https://news.yahoo.co.jp/articles/99fabf2975aa420820684d1907bc994ed581837b) ○ 本作は、スピルバーグが監督キャリア史上初めて手掛けるミュージカルで、監督は『ウエスト・サイド・ストーリー』のレコードを10歳の時に聞いて以来、頭から離れず、映画化が長年の夢だった。(https://www.oricon.co.jp/news/2219123/full/) ○ マリア役のレイチェル・ゼグラーは、今後『シャザム!』の続編『Shazam! Fury of the Gods』(原題)、ディズニー実写版『白雪姫』などに出演予定。(https://s.cinemacafe.net/article/2022/02/08/77190.html) ○アンセル・エルゴートは、トニー役を勝ち取るためにテープを送りまくった。今後、渡辺謙、菊地凛子、伊藤英明、山下智久ら日本人キャストも大挙出演するWOWOWドラマ「TOKYO VICE」にも出演予定。(https://www.cinematoday.jp/news/N0128485) ○ コロナ禍の公開延期により、原作ミュージカル作詞のスティーヴン・ソンドハイムは世界公開の2週間前に他界することになったが、本人はすでに鑑賞しており絶賛していた。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ウエスト・サイド・ストーリー_(映画)) ○日本では「グレイテスト・ショーマン」や「ボヘミアン・ラプソディ」のような音楽系の映画ではアカデミー賞に近い方がヒットすると言われている。そのため、ディズニー本社から要請があり、日米当時公開が、日本だけ2022年2月11日に公開延期となった。(https://eiga.com/news/20220210/4/) ◆概要 【脚本】「リンカーン」トニー・クシュナー 【監督】 「ジュラシック・パーク」スティーブン・スピルバーグ 【出演】 「ベイビー・ドライバー」アンセル・エルゴート レイチェル・ゼグラー(オーディションで約3万人の中から選ばれた新星) リタ・モレノ(61年版でアニタ役を演じた) 「アントマン」コリー・ストール 【振付】ジャスティン・ペック 【公開】2022年2月11日 【上映時間】156分 ◆ストーリー 1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、各グループは対立しあう。特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは、シャークスのリーダーの妹マリアと運命的な恋に落ちる。ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていく。 ◆関連作品 ○「ウエスト・サイド物語」('61)(本作のリメイク元。U-NEXT配信中) ○「ロミオ&ジュリエット」('96)(原作の映画化ディカプリオ版。ディズニープラスで配信中) ○「イン・ザ・ハイツ」('21)(移民問題を内包したミュージカル映画。プライムビデオで配信中) ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆ミュージカル ワクワク感の巨匠×初のミュージカルがどう作用するのか、その期待値は鑑賞後、じんわりとくる多幸感で昇華された。使用楽曲はリメイク元からほぼ変わってないようで、曲そのもののノスタルジーもあれば、さらにそれを目で楽しませてくれる映像の豪華さ。「America」が女性も男性もカラフルな衣装で、子供達も加わり圧巻のスケールで興じられる様は音楽好きなら誰もがノリノリになってしまうはず。トニーとマリアの「Tonight」も男でもうっとりしてしまうほどの優しい声色だったし、逆にその曲にアニータやベルナルド、リフがそれぞれの立場で加わり、決戦の夜へと変わっていく映画の山も美しかった。 ◆違い1 登場人物達も、スタイルも、エンドロールの見せ方も含め、内容は驚くほどリメイク元の作品に忠実だった。ただ大きく違ったのは二つ。一つは、61年版でアニータ役を演じたリタ・モレノがドクに変わってストア主をしていた事と、その事で彼女の曲が一曲追加されていた事。往年のファンにはたまらない演出のはず。 ◆違い2 もう一つはラストカット。ジェッツとシャークスがトニーを抱えて場を後にするだけの前作に対して、今作はそれに続くマリアとチノとヴァレンティナを俯瞰で捉えて、どこぞの外階段がその前に挟まれていた。ラストカットには監督の主観が出がちで、この外階段は何か。本作で外階段といえばもちろんトニーとマリアの「Tonight」の名シーン。本作では、柵越しの2人の映像が多用されており、まるでそれが2人の間にある全ての障壁を表しているようだった。つまり、ラストカットは、その柵越しに見ているトニーの目線。マリアへの愛はもちろん、ジェッツとシャークスの、「ここにしか居場所がない」と何度も劇中で台詞のあった、そんな彼らの人種間の融和の兆しが少しだけ垣間見えた瞬間、それを見つめるトニーの魂の目線だとしたらどうだろう。前作でも本作でも儚く死んでしまうトニーへの監督なりの弔いだった、そんな解釈もあってもいいかもしれない。 引用元 https://eiga.com/movie/91412/
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