レビュー
てっぺい

てっぺい

11 months ago

4.0


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ANORA アノーラ

映画 ・ 2024

平均 3.6

2025年03月14日に見ました。

【女優魂映画】 アカデミー作品賞・主演女優賞受賞作品。なるほど女優の体を張った演技や、静と動の演じ分けの高低差も素晴らしい。世の偏見に強くメッセージを送る骨太な一本。 ◆トリビア 〇アノーラを演じたマイキー・マディソンは、ほぼすべての賞でノミネーションを受け、BAFTA(英国アカデミー賞)・米アカデミー賞で主演女優賞を受賞。監督は「この役柄に全身全霊を傾け、懸命に努力し、私たちの期待を遥かに超える演技を見せています」と彼女を賞賛する。(https://moviewalker.jp/news/article/1250214/p2) ○マイキーはアノーラの役作りのため、ポールダンスやなまりなどを徹底練習。さらに自らアノーラが住んでいるロシア人街ブライトン・ビーチに住まいを移し、ストリップ・クラブに通ってダンサーからしきたりを学んだりと、アノーラの内側をも理解して演じるために、時間をかけ、全身全霊でこの役に臨んだという。(https://press.moviewalker.jp/news/article/1241077/) 〇マイキーはアノーラの役作りについて次のように語る。「アニーはとても情熱的で、素晴らしい闘争心を持っています。繊細なのに常にそれを隠していて、とても防御的。そういった部分を表現することは、俳優として本当に興味深い経験でした。」(https://moviewalker.jp/news/article/1248917/) 〇『アニーはイヴァンに、ダンサーとしての柔軟性を見せる』とだけ脚本に書かれたシーンで、マイキーはストリップダンスを想起し、振り付けを考え、曲と衣装を選び提案し、監督から採用されたという。「ショーン(監督)が私に映画制作のさまざまな側面に関わってほしいと思ってくれたことが嬉しかったです。」(https://press.moviewalker.jp/news/article/1248917/p2) 〇ラストシーンの撮影はどう演じるか、ずっと自分にプレッシャーをかけてとても緊張したというマイキー。撮影後、撮り直すか大変悩んだが、映像を見て気付いたという。「撮影中の私の感情が、実はアニーの感情とリンクしていたんです。私は無意識のうちにアニーと一体化していて、あのシーンで彼女の抑え込んだ感情を表現できていたんだと思います。結果的に、それがリアルな演技につながったので、今では撮り直さなくてよかったと感じています。」(https://www.esquire.com/jp/culture/interview/a64004192/97th-academy-award-best-actress-mikey-madison-interview/) 〇劇中でアノーラはラスベガスの教会で衝動的に結婚するが、米ネバダ州は婚姻手続きが簡便なことで有名であり、『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』('09)などでも使われた定番ネタでもある。(https://numero.jp/cinema-news-20250301/) ○イヴァンを演じたマーク・エイデルシュテインを“真の天才”だと編集時に気づいたという監督。「マークはすべてのテイクで微妙にバリエーションを変えて演技をしていました。つまり、彼は編集者のことを考え、ポストプロダクションにおけるカットの選択肢を与えてくれていたのです。それができる俳優は本当に珍しい。」(https://moviewalker.jp/news/article/1250214/p2) 〇マークはオーディション用に映画のセルフテープ(演技を録画して送る)を製作。アニーとイヴァンのシーンで、演技を裸で撮り、それが監督の目に止まったという。マーク「脚本にはお金持ちの設定と書いてあったのに、高級な服を持っていなかったから。リスキーだと思いましたが、イヴァンのキャラクターはそういう存在でしょう(笑)」(https://moviewalker.jp/news/article/1248917/) 〇ユーリー・ボリソフが出演した『コンパートメントNo.6』を見た監督が、イゴール役をボリソフであてがきしたという。ボリソフ「私は初めてアメリカに来て撮影をしました。私とイゴールが置かれている状況が似ていたので、『なんで俺はこんなところにいるんだ?』と周りを見渡し、なにが起きているのかを理解しようとしていました。」(https://moviewalker.jp/news/article/1248917/) ○ アノーラのキャラクターを作り上げるにあたり、邦画『女囚701号/さそり』('72)からインスピレーションを受けたと監督が明かしている。(https://anora.filmtopics.jp/2025/03/09/report/) 〇監督曰く「マイキーに役作りをしてもらうにあたり、早い段階で梶さんの「女囚701号/さそり」を見せました。この映画の中の梶さんはとても力強く、家父長制に戦う姿や体を張った演技が堂々としていてそこを見て欲しかった。」だという。(https://anora.filmtopics.jp/2025/03/09/report/) 〇ショーン監督は、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を制作する際、子どもたちと映画を撮る方法を学ぼうと是枝作品を研究したという。「是枝監督は私の人生を2度変えてくれました。1度目は映画監督を目指す際に、そしてパルムドールの審査員として。」(https://moviewalker.jp/news/article/1250214/p3) ○ショーン・ベイカー監督は本作の製作、脚本、編集も担当。単一作品でそれぞれオスカーを獲得したのは史上初となる。(https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/335938) ◆概要 2024年・第77回カンヌ国際映画祭パルムドール、第97回アカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞等5部門受賞作品。 【監督】 「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」ショーン・ベイカー 【出演】 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」マイキー・マディソン マーク・エイデルシュテイン 【公開】2025年2月28日 【上映時間】139分 ◆ストーリー ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすロシア系アメリカ人のアニーことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。パーティにショッピングにと贅沢三昧の日々を過ごした2人は、休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚する。幸せ絶頂の2人だったが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いて猛反発し、結婚を阻止すべく、屈強な男たちを2人のもとへ送り込んでくる。ほどなくして、イヴァンの両親もロシアから到着するが……。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆マイキー・マディソン 客の上で妖艶に踊るアノーラの姿から始まる冒頭。大いにインパクトがあって、アノーラの生き様を描く本作のスタートにふさわしい。アニーは夢のようなシンデレラストーリーで幸せの絶頂に達し、イヴァン去りあと地獄を味わう。イヴァンの愛を最後まで信じ続けるアニーの姿には、男の自分でも感情移入して胸が痛む。トロスの一万ドルの契約を飲むシーンや、イヴァンから愛が終わった事を告げられるシーンは、激情型のアニーが逆に静かに感情を殺す表情が印象的。そんな繊細な演技から、男二人相手に大暴れするシーン、そもそもの脱ぎっぷりに加えて、ポールダンスもプロレベルに美しい。アノーラが済む設定のロシア人街に自ら居を移して役作りしたというマイキー・マディソン。なるほど賞を総なめにした彼女の俳優としての実力が大いに発揮されていた。 ◆偏見 劇中、何度も娼婦と呼ばれるアニー。セックスワーカーではあるが決して彼女は娼婦ではなく、彼女が強く生きる姿を通して世の偏見を問う本作。アニーが初めてイヴァンの家でダンスを踊るシーンでは、局部ではなく彼女の表情にフォーカスしており、本作のスタイルがよく見える印象的なシーンだった。細かく言えば、トロスが若者に“tiktokかインスタしかしてない”とわめき散らすシーンも。唯一本作で偏見を持たないイゴールが逆に印象的で、前述のアニーが感情を殺すシーンでも彼の表情が差し込まれ、鑑賞する我々の目線に彼が立つように描かれていた。イヴァンに謝罪がない事を問う場面や、ラストも含め、偏見のない彼がアニーを救う唯一の正義だった。 ◆ラスト 振り返ればイヴァンが去ったあと、常にアニーのそばで彼女を見守ったイゴール。だからこそ、イヴァンを責める場面に説得力がある。本作で唯一、アノーラという彼女の本名、つまり真の彼女自身に興味を持ったのがイゴール。トロスから奪い返した指輪は、アニーの経済的なサポートに大いに値するのはもちろん、同時にイゴールのアニーに対する好意にも思えた。それに今のアニーが応えられるのは、生業とする奉仕のみ。まだキスできるまでの感情には至らないが、寄り添ってくれたイゴールの胸に、彼女は初めて感情を出せる場所を見つけた。長回しで、演じたマイキーがどう演じるか相当迷った事で逆にアニーと感情がリンクしたというラストシーン。地獄に突き落とされたアニーが心を少し取り戻したような、とても美しい泣きの演技だと思った。 ◆関連作品 〇「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」('17) ショーン監督の代表作の一つ。子供目線で描かれる風刺映画。アマゾンプライムレンタル可。 ◆評価(2025年3月15日時点) Filmarks:★×4.0 Yahoo!検索:★×3.6 映画.com:★×3.7 引用元 https://eiga.com/movie/101587/ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ANORA_アノーラ