
星ゆたか

ツユクサ
平均 3.1
2023.2.26 たわいもない日常の積み重ねで魅せる、シニア目前の男女の恋。 若い恋人達のラブストーリーでは、脇役の世代であまり描れなかった人達の、小さな幸せの物語。 〈ツユクサ〉は6月から9月にかけて青い小花を咲かせる雑草。 朝に咲き昼すぎにはしぼんでしまう。 朝露を連想させるから「露草」と呼ばれ、日本では万葉集にも登場する。花の色素は染料に葉や茎は生薬に。 花言葉は「尊敬」。 どこにでもあるこの雑草に、男でも女でもない、人間としての、50歳前後の恋愛を託している。 人として惹き付けあい、魂が共鳴し、生きる高鳴りの力を徐々に取り戻していく、その“ゆったり感”がとても気持ちのいい作品だ。 西伊豆の松崎町にロケした、地方の港町が舞台。若かりしころ沼津に住んだことのある私にも馴染みやすい光景。 主人公の芙美はずっと前に一人息子を幼くして亡くしている49歳の女性。近くのボディタオル工場にパートで働く。同僚の彼女を入れての仲良し三人組は、子持ち再婚の直子、夫を数年前に亡くしその時世話になったお寺の住職と付き合ってたりする妙子とどれも訳ありだ。 そのヒロイン芙美は一時子を亡くした悲しみからアルコール依存性になったが、今は断酒会に通い克服しつつある。 家の中もキチンと整頓し料理も一人でも気を抜かず、軽いジョギングなど健康にも留意している。 そんなある晩、車を走行中に“一億回に一度の隕石との遭遇”に出合う。破裂隕石が車に穴を開けて横転させた。 幸い軽傷で済むが、同僚の直子の息子(10歳位)の航平くんに。宇宙好きな彼に『これはすごい奇跡!』と言われ、自動車は修理がかかったが、内心これは“何かいいことがある”前兆かも?とも思う。またこの少年義父と中々うまく接しられない、素直になれないでいて。 母親にも心配され、その中自分の亡くなった息子と接するような気持ちの芙美さんとのやり取りも、この作品では見所の一つ。 そんな彼女がある時出会ったのが吾郎さん。 工事現場の車両整理の仕事をしているが、本当は歯科医さんらしい。 妻をうつ病の自殺から亡くしてしまい、歯科医が続けられなくなってしまったと言う。自分には歯は治せても心は救えなかったと。 “ツユクサ葉の草笛”はその亡妻から教えられたとも。 ジョギングの途中で知り合い、行き付けの店で出くわし話を交わして、次第に好意を抱き合うようになっていく。 監督は平山秀幸さん(1950年生まれ)「愛を乞う人」(99)「しゃべれどもしゃべれども」(2007)「必死剣鳥刺し」(2010)などが好きだ。 この作品は脚本の安倍照雄さんと10年前ぐらいから温めていた企画だったらしい。 出演の小林聡美さん(65年生まれ)は「転校生」(82)の少女が素敵なオバサンになって、またいい出会いがあって良かったなという、何故か自分と関わりのあった旧知の人へのような思い。 松重豊さん(63年生まれ)は昨秋、サッカーの人気選手三苫薫さんに、実は私はあなたが少年の頃、昔隣に住んでいた“オジサン”発言で、さらに好きになった俳優さん。でも最初に注目したのは2009年のTVドラマ「ありふれた奇跡」(山田太一脚本)に出演していた時から。 同僚役の平岩紙さん(79年生まれ)江口のりこさん(80年生まれ)との絶妙な“トリオ”感は最高です。 主題歌の「あなたの心に」は作詞歌唱の中山千夏さん(48年生まれ)の歌。彼女は歌手で参議院議員にもなった、現在は作家さんです。 ♪あなたの心に風があるなら そしてそれが春の風なら 私ひとりで吹かれてみたいな いつまでも いつまでも♪という歌詞の歌。 69年のヒットで口ずさみやすい曲(28万枚のシングルレコードの売り上げ)「嫌われ松子の一生」(2006:中島哲也監督)でも使用されたらしいです。(この作品見て気にいってるんですけど、その記憶が定かでありません。)