
星ゆたか

ザ・マスター
平均 3.3
2023.5.10 1950年代から隆盛した新興宗教(サイエントロジー:創始者・L.ロン・ハバード)をモデルにそのカリスマ教祖と。 戦争後遺症に悩む復員兵の愛憎入り交じる関係性を俳優陣の重厚な演技で描き出した人間ドラマです。 監督はポール・トーマス・アンダーソン(70年生まれ)さん。 本作6作品目にして世界三大映画祭の監督賞受賞の稀有な演出家とされている。 主演はその教祖役ランカスター・トッドにフィリップ・シーモア・ホフマン(1967~2014)さん。 同監督の作品に五作出演しています。 「カポーティ」(05)でオスカー受賞のすてがたい魅力を持った俳優さんだったんですが。 14年にヘロイン過剰摂取により、46歳で惜しくも他界していますね。 復員兵フレディ・クエル役に ホアキン・フェニックスさん。 「ジョーカー」(19)のオスカー俳優で、他にも数々印象的作品があります。 93年に兄リバー・フェニックスさんが 大量の麻薬服用で亡くなる事件の時。 そばにいてマスコミの過剰取材に嫌気が差し、一時映画から離れた時があったんですね。 また「グラディエーター」(00) 「ウォーク・ザ・ライン」(06)などの活躍を経て。 さらに歌手転向発言(08)もありましたが。本作品は俳優としては二度目の、 本格的映画復帰にあたります。 役同様本人も一時アルコール依存症になった時期もあったとか。 他には教祖の妻ペギー役にエイミー・アダムス(74年生まれ)さん。この人の「魔法にかけられて」(07)なんて大好きだけど。他にもオスカー候補の常連と呼ばれる演技派ですね。 また教祖夫婦の娘の婿役に「ボヘミアンラプソディ」(18)でオスカーのラミ・レミック(81年生まれ)さん。 この人の顔は、出身のエジプトが、なんとなく納得です。 教祖の息子役には、フィリップ・シーモア・ホフマン似のジェシー・プレモンス(88年生まれ)さん。 「パワーオブザドッグ」(21)が評判みたいですね。 さてポール・トーマス・アンダーソン監督は。作品の特徴としては。 〈家族の機能不全〉〈社会からの疎外や孤独〉〈疑似的な父子関係〉などのテーマが上げられるそうですが。 本作もまさにそういった内容の映画でした。 また技術的には、手持ちカメラによる移動撮影などの大胆な視覚効果が特色とも言われてます。 影響のあった監督に。 スタンリー・キューブリック。 ロバート・アルトマン(の群像劇) ジョナサン・デミの名前を挙げてます。 本作品の中で教祖ランカスターと復員兵フレディが教義の実践の一環として。 荒野をバイクで疾走するシーンは、 ジョナサン・デミ監督の「メルビンとハワード」(80)日本未公開のハワード・ヒューズと遺産相続人メルビン・デュマの物語の映画のオマージュだそうです。 この映画に描かれる新興宗教問題は、対象は変われど。 日本でも度々テレビなどを賑わしています。 このモデルとなったとされるサイエントロジーという宗教団体も。 その後の組織拡大で世界規模の、それこそ社会的影響での訴訟裁判になっているらしいですね。だから宗教組織として認めてない国も少なくないとか。 『個人の精神性と能力と倫理観を高めることによって、より良い文明を実現しよう』の主張に賛同した。 一例を上げれば、トム・クルーズが2006年にパラマントから14年に及ぶ契約の打ち切りや、フランスのパリ名誉市民の称号を取り消されたなどの問題があったそうです。 劇中での教祖の弁明には、理解を持てる所も一部はありますが。 けれど宇宙起源の創世以前の話は、やはりSF的空想理論で突然突拍子もなく。 またその組織運営にあたっての大金の流れや、メンバーの言動制限におよぶ過激な圧力などは、このての宗教問題に必ず付きまとい。 組織が大きくなれば、集まる人間や思考のズレや主張における争いも生じて。 他の宗教組織と同じように、教祖が掲げる理想論どうりにはいかないものみたいですね。 『人間は肉体に宿る不滅な霊的存在(セイタン)であり、無数の過去世を持っている』 その〈過去への旅〉という催眠療法による簡易プロセシングを試すことで。精神の解放を唱えていて。 主人公のフレディは戦争に出兵する前に知り合った16歳の少女ドリスが、心の核にあり。 その彼女との約束、帰還したら必ず戻って会いにくるを実行しないまま数年。 彼女が23歳になった時その実家を訪ねます。すでに3年前に結婚し子供も二人いるとの玄関前の彼女の母親との会話も。 それが彼を本当には救えた“過去”への旅だったのかと。 普通の常人レベルの意識では思うのかな。 今回の観賞は。 2014年の4月16日WOWOW放映の「W座からの招待状」を録画ダビングしたディスクによります。 その案内人に現在も続けている小山薫堂さんと。その年の3月19日に71歳で脳出血で亡くなった。 イラストレーター安西水丸(本名渡辺昇)さんの最後の姿を見ることに。 安西さんは小説家.村上春樹さんとも親交の深い、著書もたくさんある方ですね。 このW座の放映は作品放映の前後に感想解説が入る。 私のお気に入りスタイルの番組で。 現在は三代目・信濃八太郎さんのイラストと小山薫堂さんの解説。 そして浜田岳さんのナレーション。 阿部海太郎さんの音楽と、とてもいい雰囲気で続いていて。 それはカフェで好きな映画を語る。 その見終わった映画の感想を仲のいい友達と話す。 そこから始まる至福の時間の世界への導きを想像させてくれる貴重な取り組みで。 映画館はただ映画を提供するだけでなく、その後の楽しみを共有する場でもあって欲しいとずっと思っている私です。