レビュー
【ゲイリーの目に見た究極の緊張感】 降伏か抗戦か、就任間も無く究極の選択に迫られる首相の緊張感が超リアル。個人的には目の痙攣で見せた緊張の表現をこの映画のピカイチにしたい。 ◆ 第90回アカデミー賞主演男優賞受賞作品。同メイクアップ&ヘアスタイリング賞を、日本人の辻一弘らが受賞。出演は、メイクアップに200時間以上かけて挑んだというゲイリー・オールドマン、『イングリッシュ・ペイシェント』のクリスティン・スコット・トーマス、『ベイビー・ドライバー』のリリー・ジェームズなどなど。監督は、『つぐない』のジョー・ライト。 ◆ 「世界のCEOが選ぶ、最も尊敬するリーダー」(2013年PwCJAPAN調べ)に、スティーブ・ジョブズやガンジーを抑えて選ばれた伝説の政治家チャーチルは、最大の国難に直面したその時、いかにして人びとに勇気と希望を与えたのか? チャーチル没後に公開された戦時内閣の閣議記録によって明らかとなった実話を基に、チャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの知られざる27日間を描く。 ◆ 降伏か抗戦か、周りの国々が次々と降伏をしていく中で、自国を守るための究極の選択を迫られるチャーチル(ゲイリー・オールドマン)のまさに究極の心理状態が実にリアル。こと、国王と最終対話をする直前の、チャーチルの目が痙攣する様子。ほんの一瞬だったけど、そしてあれが演技だったのか演出だったのか分からないけど、超一級の演技をみた気がする。これぞまさにアカデミー級、究極の緊張感を見たこともない一瞬の表情で表現してくれたと思いました。 映画全体としても、意外とシンプルな話なので見やすいし、チャーチルの人間性の描き方が丁寧。ちょっと変わり者だけどどこか憎めないし、怒鳴り散らすけどどこか人間味があるような、偉人なのに偉人に感じない親近感、そんなチャーチルの描き方をしていたと感じた。 ◆ちょっとネタバレします◆ それはラストでチャーチルが国民に直に意見を聞きにいく地下鉄のシーンにもあらわれていて、国の一大事は官僚閣僚だけではなく、国民の意見を最重要視すべきだ、そんなメッセージを感じたし、それを大きなこの映画の山としていたと思う。 個人的には昨年見た『ダンケルク』が違う視点で描かれていて、まるであの映画のアンサームービーというか、よりあの一連の出来事を思い出しながら、まるで2つの映画を同時に見ているような不思議な感覚だった。 演出面では、チャーチルが降伏に傾くまでと、最後の決断に進む後半に決定的な違いを作っていたと思う。前半何度も出てきたチャーチルが俯瞰に拡がっていくシーンは、周りが全て真っ暗。味方に恵まれないチャーチルの心理状態を表していた描写に反して、後半は圧倒的な味方だらけの画。地下鉄のシーン、ラストの国会のシーンしかり。 忘れてはいけないのが、献身的でかつ肝っ玉、いつもチャーチルを導く奥さんのクレメンティーン。迷うから賢くなれるのよ、欠点があるから強くなれるのよ、名言の連発で、チャーチルがなぜチャーチルになれたのか、根底にある夫婦愛が要所要所で描かれていたと思う。 最後に、日本人としてはどうしても気になる特殊メイク。あまり技術的な事は分からないけど、もちろん終始顔に違和感はなかったし、これがゲイリー・オールドマンかと思うほど声も違っていたし、完璧だったと思う。前述の目の痙攣含め、主演男優賞を受賞する理由はいくらでも見つけられた。 シンプルな話ながら、色んな発見がある、興味深い映画でした!
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