レビュー
まさに今この時期に作られ、この時期に見るべき映画だと思います。劇中で描かれるデトロイト市内には暴力と憎悪が蔓延しており、互いが互いを傷つけあっている。50年前の事件と謳われてはいるものの、移民に対する差別や人権侵害がエスカレートしている現代のアメリカはこの時から何も変わっていないのだと思い知らされます。 序盤で登場人物のラリーが「結局愛がなきゃダメなんだ」と美声を披露するシーンがありますが、どんなに過酷な状況でも信じることや愛することを止めるな、という実にストレートで力強いメッセージが胸を打ちます。 反面、生き残った人間の証言や資料をもとに再構成し、ジュリーさんをアドバイザーとして撮影現場に参加させてリアリティを追求したとはいえ、本作にはストーリーにより緊迫感を持たせるため、より感動的な話にするために意図して「作られた」シーンが存在します。 『デトロイト』を見た後、アメリカという国自体に、そして加害者の白人たちに対し、怒りや嫌悪感が沸き上がるのも無理のないことでしょう。しかし、本作を新たな憎しみを生むための火種にすることは決してあってはなりません。フィクションの要素も含まれていることを前提に事実を受けとめ、見た皆さんが冷静に考えた先に、「慈愛」があることを切に願います。
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