
Till

未来世紀ブラジル
平均 3.5
イギリスのコメディグループ「モンティ・パイソン」のメンバーとしても知られるテリー・ギリアム監督のSF映画。 舞台は「20世紀のどこかの国」。しかしそこはユートピアではなく、情報省によって異常なまでに国民の生活が管理されていたり、何をするにも書類が必要な極端な文書主義制度だったり、と色々と問題だらけの完全なディストピア。こんな窮屈で息苦しい世界を描いているのに、ラストまではほとんどウェットな感じにはならず、むしろ要所要所に差し込まれるブラックジョークやギャグによってしっかり笑わされる。しかし、そんな中で唐突に突きつけられるあのラスト。それ以前がコミカルな作りになっているがゆえに、この風刺の効いたラストがより一層重くのし掛かる。 この結末に難色を示した映画会社は大衆ウケを狙ってハッピーエンドバージョンを要求したらしいが、これはホントにアホな話で、もしそれだったら非常に軽薄なところに着地していたに違いない。あのシニカルなラストであってこそ本作の持つメッセージ性はより痛烈なものになっているので、ちゃんとこのオリジナル版で公開に踏み切ったのは英断だったと思う。結果的に興行収入では失敗しちゃったみたいだが、ハッピーエンド版だったらもっと失敗していたかもしれないし、批評家からもこれほど高い評価は得られなかっただろう(Rotten Tomatoesでは98%フレッシュ)。 ただ、個人的に主人公はもっと素直に感情移入できる人物でよかった気もする。彼は「自由への渇望」というよりもただ単に「ジルと付き合いたい」という下心が原動力になっているように見えなくもないし、それゆえにラストの絶望感が若干薄れてしまっているようにも思える。でももし彼を純粋な男として描いていればそれはそれで悪い方向に化学反応を起こしていたかもしれないので、一概に断定はできないのだが、少し引っかかる点ではあった。 この世界観を好きになれるかどうかで評価は二極化するでしょうが、ハマる人はとことんハマる、まさにカルトな映画です。