レビュー
Till

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4 years ago

2.5


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スキャナー・ダークリー

映画 ・ 2006

平均 3.1

フィリップ・K・ディックの『暗黒のスキャナー』(原題は同じ)を原作とするSFサスペンス。 この映画では「ロトスコープ」という実写映像をトレースしてアニメーション化する技術が使われているため、キアヌ・リーブスやロバート・ダウニーJr、ウディ・ハレルソン、ウェノナ・ライダーなど名だたる役者が出演しているものの、全員がアニメーション化されてしまっている。これによって妄想と現実を曖昧に表現しているそうだが、果たしてこれをする意味があったのだろうか。この実写ともアニメとも言い切れない中途半端な映像が終始違和感だったし、これのせいでなかなか没入することができなかった。実写映像ならではのリアル感、表情の機微が失われているし、逆に実写をトレースしただけなのでアニメならではの奇抜さにも欠ける。確かに「スクランブル・スーツ」と呼ばれる特殊なスーツの描写とかを実写でCGで表現するのは難しかったのかもしれないが、ドラッグの幻覚などはむしろCGでやったほうが面白いのではないか。この映像的な“違和感”や“気持ち悪さ”は狙いだったのかもしれないが、それによって映画に集中することまでも阻害してしまっているし、完成のために30人のアニメーターが15か月も要したという効率の悪さも考えれば、これは失敗だと言わざるを得ないだろう。 ストーリー自体はフィリップ・K・ディックの原作という確固たる基盤があるので、普通に面白いと思う。確かに近未来を舞台としている割には『ブレードランナー』や『トータル・リコール』のような分かりやすい派手なSF的ガジェットも出てこないし、話自体も暗くて地味。ただ、かつて麻薬を常用していたディック自身が経験した麻薬の恐ろしさであったり、狂気性であったり、そういったメッセージ性は感じられた。 映画としては決して面白いとは言えないが、「ロトスコープ」を全編にわたって使用した実験映画としては(それが成功しているかどうかは置いといて)一見の価値があるかもしれません。