レビュー
ヴィンチェンゾ・ナタリが監督・共同原案・共同脚本を務めた、2009年公開のSFホラー。 遺伝子学者の夫婦が医療の進歩の為として未知の生命体を生み出してしまう様子を描いた本作、製作費はナタリ監督の出世作『CUBE』の約100倍に当たるそうです。これはあらゆる意味で強烈な一本でした!まず何よりショッキングなのは、主人公夫婦が創り上げた生命体”ドレン”の見た目の半端じゃないキモさですよね。第1形態はもちろんですが、そこから徐々に人間の姿へと成長しても、あくまで半人半獣という禍々しいルックスとそれが醸し出すリアルで気味悪い生物感が常に絶妙なバランスで保たれています。ドレンちゃん、あなた、ちゃんとキモいわよ。加えてこのドレンは夫にとっては”望まずして産まれた子供”であり、更に産まれた子供は奇形児であるという点からもドレン周りの描写はデヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』を非常に彷彿とさせます。そこから夫婦がドレンを秘密裏に育成していく過程は「実生活での子育て」のメタファーとして描かれており、これ程までにグロテスクな話にも関わらず話の飲み込みづらさなどは一切感じさせません。更に本作では子育てだけには留まらず、父母の歪んだ愛情が行き着く先として起こる”虐待”までをストレートに描いてみせています。こうして字面上で見ると重苦しげにも感じてしまいますが、これこそが間違いなく本作のハイライト!特に最悪(=映画としては最高)なのは夫クライヴさんですよ。何が最悪って、繰り返しになりますがドレンはちゃんと”半人半獣”なんですよね。なので虐待&不貞という倫理的にも確実にアウトな上に、その相手が最中に半人半獣の”獣の部分”を見せることによりこちら側が感じる生理的嫌悪感も更に倍増し、結果としてあらゆる意味で最悪な場面になっていると思います。映画史上でもここまで気まずくいたたまれないシーンって結構稀じゃないですかね、でもやっぱりちょっと笑ってしまいました。 本作にはギレルモ・デル・トロが製作総指揮として参加していますが、言われてみれば『シェイプ・オブ・ウォーター』は本作のエッセンスもかなり濃厚ですよね。ただ本作に関してはあの場面がとにかく強烈過ぎて、以降の展開はどうしても印象が薄いように感じました。ただそれでも作品全体のインパクトは凄まじいですし、中盤のシーンとは意味が180度反転するラストの”とある台詞”には何とも嫌な余韻が残ります。観終わった後もしばらく気分が冴えませんでしたが、映画としてはやっぱりめちゃくちゃ面白い一作です!一人鑑賞推薦! 女性視点で観たらどうなるのかが気になる。
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