レビュー
【飲み込まれる映画のスクリュー】 鮮やかに決まる詐欺の手口に、誰が、何が真実なのか分からない、映画の心理スクリューに飲み込まれる感覚がピカイチ。話が事実でしかも本人監修、嘘だらけなのに本物の、リアル鬼ごっこインザワールド。 ◆概要 監督はスティーブン・スピルバーグ。出演はレオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクスら。クリストファー・ウォーケンは本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。世界26カ国で約400万ドルを稼いだ実在の詐欺師フランク・アバグネイルの自伝小説『世界をだました男』を元に製作。 ◆ストーリー 高校生のフランク・W・アバグネイルは父母の離婚に家を飛び出し、生活のため偽造小切手の詐欺を始め、巨額の資金を手に入れる。一方、巨額小切手偽造詐欺事件を捜査していたFBI捜査官カール・ハンラティが、徐々に犯人に迫っていく…。 ◆感想 怒涛の心理作戦に加えて、人間味溢れる詐欺師のサクセスストーリー。事実に基づいた話である事に驚くうえ、本人が監修についている事で、脚色が過度でない事も分かり、映画の真実味がグッと増している。 ◆以下ネタバレ◆ なんと言っても、鮮やかに決まる詐欺師のトリックに、何度もハッとさせられる。カール(トム・ハンクス)が201号室でフランク(レオナルド・ディカプリオ)を追い詰めたシーンは特に圧巻。2人が交わる初のシーンであり、ピンチでも平然と機転を利かせるフランクと、カールの無念の様がルパンと銭形を彷彿とさせる笑。映画を通して描かれる2人の“鬼ごっこ”の代表的なカットで、とてもクールだった。 父親をいつも敬愛し、逃亡の末辿り着くのが母親の元であったのも、彼の人間性の表れ。絶対的な詐欺師でありながら、人間味溢れる彼のそんな描写が映画の深みを増していたと思う。父の死に動転しながらも、それを逃亡の一助にしてしまう飛行機でのシーンは、まさに“なんて奴だ”と驚いた! でも1番驚いたのは、フランクが逃げ回っていたFBIそのものに自ら働く事になると言う事実。小説より奇なりとはよく言ったもので、どんなファンタジー映画にも真似できない話の芯そのものの面白さがある。エンドロールで紹介のあった、フランクがその後偽造防止小切手を考案したという話もとても面白い。もはや映画は彼のサクセスストーリーそのもの。 フランクの逮捕に至るフランスのシーンでは、カールが嘘をついているのか?フランクがまだ逃げ失せる手立てを持ち合わせているのか?どちらとも分からない、この映画が通して描く、心理のスクリューに飲み込まれたような感覚だった。終わってみればカールは通して嘘を一切ついておらず、フランクとの真逆の存在として対比的に描かれる映画のアートでもあった気がした。 世界を股にかけたリアル鬼ごっこ、しかもそれが事実だと言う重み。スピーディーでどこかワクワク。面白かった!
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