レビュー
"アメリカ・香港合作のスター競演でアメリカ横断レースを描いた 「キャノンボール」" この「キャノンボール」という映画は、アメリカの東海岸から西海岸までの5,000キロを普通乗用車で突っ走って、誰が早く完走するか、その大レースを面白おかしく大賑わいの娯楽映画に仕立てたアメリカ・香港の合作です。 かつて、「80日間世界一周」(マイケル・アンダーソン監督)、「おかしな・おかしな・おかしな世界」(スタンリー・クレイマー監督)、「グレートレース」(ブレイク・エドワーズ監督)、「素晴らしきヒコーキ野郎」(ケン・アナキン監督)と、超大型スクリーンによるレース映画が流行しましたが、この「キャノンボール」は、それを現代的にスピードアップしての復活として当時公開されたのです。 まず面白さのポイントは何といっても、その豪華なキャスティング。救急車でぶっ飛ばそうとするのが、公開当時、マネーメーキング・スターの常連だったバート・レイノルズ。救急車なら警察の検問も切り抜けられて、思い切りスピードも出せるというわけです。 このあたりは、四六時中、救急車のサイレンが鳴っていると言われるアメリカならではの、ズバリ笑いにつながるギャグなのかも知れません。 そして、彼に巻き込まれるのがTV版「チャーリーズ・エンジェル」で大人気だったファラ・フォーセット。 アメリカと香港の合作という事で、当然の事ながら、当時、香港の大スターだったジャッキー・チェンとマイケル・ホイも出演していて、彼らは日本人を徹底的に風刺する存在として登場。 でも行く手を暴走族に阻まれれば、お決まりのカンフー・アクションが炸裂----。 この暴走族のリーダーが何と「イージー・ライダー」「ワイルド・エンジェル」のピーター・フォンダ。 そして、アストンマーチンに乗って現われるのが、ご存知3代目ジェームズ・ボンドことロジャー・ムーア。 あの007のパロディを、ボンド・スター本人が平然とやって見せる度胸の良さ----。 それから、懐かしいディーン・マーティンとサミー・デイヴィスJr.は、偽牧師。 サミーが出演すると見事に画面が楽しくなって、本物のエンターテイナーとはこれなんだと妙に納得してしまいます。 おかげで他のスターは完全に食われてしまってお気の毒様という感じになります----。 この映画の監督は、「トランザム7000」のスタントマン出身のハル・ニーダムですが、彼の演出は目先のアクションは描けても、ドラマ全体をつかむ力がないために、スター個人の魅力のみに頼らざるを得なくなり、全体として破綻してしまっているような気がします。 エンドタイトルに、香港映画お得意のNGカットのシーンが流されますが、スターたちの楽しい素顔が出ていて、これらがこの映画の中で一番面白いという皮肉な結果になっていたと思います。
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