Balloon Flowers5.0ここ10年間で1番の傑作とも言える作品。ネットフリックスに契約している人は是非観て欲しい。 この作品は、監督アルフォンソキュアロンを育てた乳母リボとの思い出を元に作られた監督の自伝的な作品。70年代初頭のメキシコシティ、学生運動による混乱の中で生きていた人々を、中流階級の家庭で働く家政婦クレオの視点から描いている。歴史映画にも近い。 ヒロインのクレオ役をはじめとした殆どの出演者が素人。全体のシナリオを知っていたのは監督だけで、役者たちにはその場で流れを説明して、あとはアドリブで撮っている。クレオ演じるヤリッツァアパラシオは学校の教師で、彼女の子供に対する愛を感じ取り、この役に起用したそうだ。 「トゥモローワールド」、「ゼロ・グラビティ」で手を組んだルベツキが参加できなかったため、監督自身が撮影を務めた。「過去を現代の視点から観察する」というコンセプトで撮っており、過去を描くため白黒であるものの、映像はとても綺麗で洗練されている。 この映画で、私が一番印象的に思ったのが“音”である。全編BGMはなく、全て環境音で構成されている。クレイが水を撒く音、犬の鳴き声、ラジオから流れる音楽、喧騒とした街中での人々の話し声、田舎の村で駆け回る羊たち。監督は、この映画は普遍的で誰にでもわかるような作品であって欲しいと言っている。この作品を通して、観る者の過去や記憶に繋がってほしい、あなたにとっての“ローマ”を私や世界と共有して欲しいと。この何気ない音たちが、この映画が我々を過去と結びつける助けになっていると思う。 ただノスタルジーに浸るだけではなく、自分がどのような人生を送ってきたのか考えながら観るととても良いんじゃないかなと思う。 当時のメキシコでの人種や社会階級による格差というのも、この映画の重要な要素の一つ。現代に通ずる問題を描いた社会的な作品でもあるのだ。 すでにヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しており、ゴールデングローブ賞では3部門にノミネートされている。スピルバーグはネット配信の映画が賞を取るべきではないと言っているが、我々に素晴らしい体験を提供してくれたこの作品には、是非何かしらの賞を取ってほしい。いいね25コメント0
ジュネ4.02019年90本目はネットフリックスが配給権を獲得したものの、各映画祭で絶賛の嵐を巻き起こしたアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA』。 アップリンクやシネマートなど、関東では小さな映画館でも拡大公開が決まっており、さすがにこの波を逃すまいとしたようですね。ただ、本作は65ミリで撮影した鮮明すぎる美しい映像と圧倒的な音響に浸るべき一作ですから、イオンシネマだけではなくもっと大きな映画館が名乗りをあげないと ダメだと思うんですけど、収入が見込めないと後退りしてしまって…本当に悲しいやら情けないやら。 確かに70年代メキシコを背景に淡々と家族の日常を写し取っていくだけの映画ですが、全てのシーンに意味が込められていて何度となく見返したくなりますし、「映画とは」という命題をとことん突き詰めていったら最後に行き着くのはきっと『ROMA』のような作品だと感じます。 私は映画って人の生きざまを写しとるものだと思っているんですが、本作はまさにアルフォンソ・キュアロン監督の人生の足跡を辿る旅路そのものです。フィクショナルな要素もなく、彼の過去と思い出に満ちた非常に個人的な134分に付き合わされるんですけれど、赤の他人の貴重な一瞬を覗き見て共有するなんて「映画」でなければできない経験だと思います。 ネットフリックス配給になったのは少しでも多くの人に見てほしいとの狙いだったようですが、そうでもしないと注目を集められない今の世の中や、これが無料で見れちゃう時代に少々寂しい気持ちにさせられました。いいね11コメント0
餅太郎3.0アカデミー賞の審査員にはなれないなと実感した作品。ロングテイクのカッコいいシーンが随所に散りばめられていて、それはそれは超〜見ものである。「ぉおお〜すごい!」 (最近流行りみたいだが)音楽も全く無いし変な効果音も入ってない。しかし、生活音、人間を取り巻く自然な音を下敷きに繋がれる美しいモノクロの映像が見ていて飽きない。映像ですョ。 過剰な演出もなければ、ハラハラも無いし笑えないし胸が締め付けられるシーンすら無い。 半生を走馬灯の様に振り返った時の感じと云うのかな…ナレーションなしのドキュメンタリーみたいな。果たしてこれは映画なのだろうか。 そして今、湧き上がる疑問 「ん?何故アカデミー賞?」 そう、悪くは無いんだけどね。 ジム・ジャームッシュを初めて見た時のような、心が動かされた感じが1つも残らない。 鮮明な記憶は大量な犬の「う◎こ」 (何年経っても忘れない自信がある) クレオ役の女性はとても良い存在、 彼女の演技ではなくて在り方が素敵だ。 そう、もっと褒めたいし感動したい‼︎ 劇場で見ていたら、大きなスクリーンでどこでもドア的な立ち位置で鑑賞できたならば感想は大きく変わるだろう。 Netflixで配信なのは最大の残念な要素。 フルカラーで劇場公開されるならばもう一度見てしまうかもしれない。 しかし、まぁ星は3つである。いいね9コメント0
てっぺい4.02018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門金獅子賞、第91回アカデミー賞外国語映画賞、監督賞、撮影賞受賞作品。監督・脚本は「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン。キュアロン監督の半自伝的Netflixオリジナルヒューマンドラマ。 ◆ストーリー 70年代初頭のメキシコシティ。とある中産階級の家で家政婦として働く若い女性クレオは、同僚の恋人の従兄弟である青年フェルミンと恋に落ちるが…。 ◆感想 家族愛の1つの形。ある家族とその家政婦の日々の暮らしが淡々と描かれる中、いくつか起きる出来事が家族と家政婦の絆をゆっくりと深く結びつけていく展開に、なんとも言えない心の安らぎを覚える。 ◆以下自分の解釈かつネタバレ◆ ふとした出会いから身籠もるクレア。男には姿を消され、会いに行くも絶縁を叩きつけられる。気を乱したり葛藤する描写もなく、常に感情を表に出さない存在として描かれるクレア。この時代の動乱に巻き込まれ破水し、死産を迎えた彼女が家族との旅行に同行。旅先で起こる子供達の危機を救い、皆で抱き合う中に初めて出る彼女の本音、“本当は産みたくなかった”。 冷静な彼女が、新しい命を宿した事で、何よりも大切にしていた家族との関係が壊れるのを1番恐れていた事が間接的に吐露される、この映画の1番の山だったと思う。それまで感情を表に出さない彼女の人物描写がその強調にもなっていたし、彼女が身ごもった事を明かす時に何よりもまず気にしたのがクビかどうかだった事も、その事の裏付けになっていると思う。 要所要所で用いられている長回しもこの映画の特徴。前述の海で子供が溺れるシーンしかり、圧巻だったのはクレアが死産を迎えるシーン。分娩室に入ったところから、子供が生まれ、緊急手当、死産確定までがノーカットで描かれ、緊迫感が頂点。同時にこのシーンで、破水し胎盤がはみ出す痛みも気に留めず子供が気になるクレア、死んでしまった子供にかける言葉もないクレア、そして前述の“本当は産みたくなかった”という感情も含め、ありえないほど複雑な感情表現をこのシーンで見事に演じ切ったヤリッツァ・アパリシオにも拍手。彼女はこの映画で一躍有名になり、多数の賞を受賞したらしい。 はじめは淡々と描かれる日常に「パターソン」的な平坦展開かと身構えたものの、逆にそれが山のシーンへの大きな振りかぶりになってました。いい映画だと思う。ただ冒頭とエンド、そして武術練習場などのシーンで登場した飛行機。監督がこの映画に残したメッセージの1つだと思うけど、解釈が追いつかず…どなたか教えてください!いいね7コメント0
shimabukurock見ている最中とにかく撮影が素晴らしい。 淡々とし過ぎているくらいの物語と、リアルではあるけれどなかなか感情移入しづらい演技や設定に対して。 出来事を立体的に、実在感を持って捉えている。 観ている時にはどうってことない人物たちの感情が、しばらく経ってくるとズンと迫ってくる。 それを追うカメラ。まさに被写体との距離感と、時間を経て見つめる視点のバランス。 客観ショットのようで、たしかに「見つめている」というアングル。 1970年のメキシコ。富と貧困の格差と。民族の壁。女性の尊厳について。キュアロン監督の追憶の世界に浮かび上がるのは実に現代的な政治的メッセージ。 過去のエピソードから、実に現代の課題が見事に浮かび上がるのも見事。 主人公のクレオの床を掃除し、テーブルを磨き上げる、その美しさを画面が捉え。 まさに「磨き上げていく」映画だなぁと感動。メッセージを叫ぶことは一切せずに、出来事、視点、のみでここまで重層的な感情の物語、というのが実に映画的で、力強い。いいね6コメント0
ひろ4.0アルフォンソ・キュアロン監督・脚本・製作・編集によって製作された2018年のアメリカ/メキシコ合作映画 ・ 第75回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞 第91回アカデミー賞で外国語映画賞・監督賞・撮影賞を受賞した ・ 1970年のメキシコシティのコロニア・ローマが舞台。そこで暮らす中流階級の家庭とその家政婦の日常を描いた作品 ・ 映画評論家から絶賛され、数々の映画賞も受賞した作品だが、「ゼロ・グラビティ」でもオスカーで監督賞を受賞しているキュアロン監督。ハリー・ポッターまで監督した彼からしたら、この作品は賞レースを獲るために作った感じはしない。彼が育ったメキシコシティを舞台にした半自伝的作品で、こういう映画を撮りたかったという監督の熱意が伝わってくる内容だ ・ 全編モノクロだし、英語も使われていない。このような作品がオスカーで賞を受賞したことはない。しかもNetflix配給だから映画館での上映は少ない。それでも高い評価を得たのはすごいことだ。新しい時代がきた。モノクロって使いたがる人は大抵カッコつけなんだけど、この作品では時代的にも内容的にもモノクロの雰囲気がよく合っている。色にはたくさんの情報が込められているから、色がない方が内容に集中できる ・ 夫婦間がうまくいっていない中流階級の夫婦。子供は4人。家政婦は2人。主人公のクレオは子供の面倒見もいいし、よく働く女の子。そんなクレオにも家族にもいろいろあります。人生は楽しいばかりじゃない。笑ってる時もあれば鳴いてる時もある。辛くても辛くても生きていく。萎れた花も水を差せばまた咲く。折れた骨は前より強くなる。人生は美しい。そんなキュアロン監督のメッセージが映像美と共に物語られる。特にジャケットにも使われている波打ち際のシーンは最高に美しいシーンだった ・ こういった賞レースのために限定劇場公開している作品への賛否はあると思う。スピルバーグが映画は映画館で観るものだという強い信念からNetflixを批判している気持ちはよく分かる。電子書籍より紙の本が好きだという感覚と似ている。でも面白いものは正義だというのもうなずける。名監督が好きなように撮った作品なんて観たいに決まっている。なんならスピルバーグにもNetflixで作品を作ってもらいたい。映画館で観る映画が最高であるのは揺るがないが、面白い作品が誕生するなら今後も目を瞑りましょういいね5コメント0
Balloon Flowers
5.0
ここ10年間で1番の傑作とも言える作品。ネットフリックスに契約している人は是非観て欲しい。 この作品は、監督アルフォンソキュアロンを育てた乳母リボとの思い出を元に作られた監督の自伝的な作品。70年代初頭のメキシコシティ、学生運動による混乱の中で生きていた人々を、中流階級の家庭で働く家政婦クレオの視点から描いている。歴史映画にも近い。 ヒロインのクレオ役をはじめとした殆どの出演者が素人。全体のシナリオを知っていたのは監督だけで、役者たちにはその場で流れを説明して、あとはアドリブで撮っている。クレオ演じるヤリッツァアパラシオは学校の教師で、彼女の子供に対する愛を感じ取り、この役に起用したそうだ。 「トゥモローワールド」、「ゼロ・グラビティ」で手を組んだルベツキが参加できなかったため、監督自身が撮影を務めた。「過去を現代の視点から観察する」というコンセプトで撮っており、過去を描くため白黒であるものの、映像はとても綺麗で洗練されている。 この映画で、私が一番印象的に思ったのが“音”である。全編BGMはなく、全て環境音で構成されている。クレイが水を撒く音、犬の鳴き声、ラジオから流れる音楽、喧騒とした街中での人々の話し声、田舎の村で駆け回る羊たち。監督は、この映画は普遍的で誰にでもわかるような作品であって欲しいと言っている。この作品を通して、観る者の過去や記憶に繋がってほしい、あなたにとっての“ローマ”を私や世界と共有して欲しいと。この何気ない音たちが、この映画が我々を過去と結びつける助けになっていると思う。 ただノスタルジーに浸るだけではなく、自分がどのような人生を送ってきたのか考えながら観るととても良いんじゃないかなと思う。 当時のメキシコでの人種や社会階級による格差というのも、この映画の重要な要素の一つ。現代に通ずる問題を描いた社会的な作品でもあるのだ。 すでにヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しており、ゴールデングローブ賞では3部門にノミネートされている。スピルバーグはネット配信の映画が賞を取るべきではないと言っているが、我々に素晴らしい体験を提供してくれたこの作品には、是非何かしらの賞を取ってほしい。
うのわかば
4.0
映画史に残るくそ男フェルミン
ジュネ
4.0
2019年90本目はネットフリックスが配給権を獲得したものの、各映画祭で絶賛の嵐を巻き起こしたアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA』。 アップリンクやシネマートなど、関東では小さな映画館でも拡大公開が決まっており、さすがにこの波を逃すまいとしたようですね。ただ、本作は65ミリで撮影した鮮明すぎる美しい映像と圧倒的な音響に浸るべき一作ですから、イオンシネマだけではなくもっと大きな映画館が名乗りをあげないと ダメだと思うんですけど、収入が見込めないと後退りしてしまって…本当に悲しいやら情けないやら。 確かに70年代メキシコを背景に淡々と家族の日常を写し取っていくだけの映画ですが、全てのシーンに意味が込められていて何度となく見返したくなりますし、「映画とは」という命題をとことん突き詰めていったら最後に行き着くのはきっと『ROMA』のような作品だと感じます。 私は映画って人の生きざまを写しとるものだと思っているんですが、本作はまさにアルフォンソ・キュアロン監督の人生の足跡を辿る旅路そのものです。フィクショナルな要素もなく、彼の過去と思い出に満ちた非常に個人的な134分に付き合わされるんですけれど、赤の他人の貴重な一瞬を覗き見て共有するなんて「映画」でなければできない経験だと思います。 ネットフリックス配給になったのは少しでも多くの人に見てほしいとの狙いだったようですが、そうでもしないと注目を集められない今の世の中や、これが無料で見れちゃう時代に少々寂しい気持ちにさせられました。
餅太郎
3.0
アカデミー賞の審査員にはなれないなと実感した作品。ロングテイクのカッコいいシーンが随所に散りばめられていて、それはそれは超〜見ものである。「ぉおお〜すごい!」 (最近流行りみたいだが)音楽も全く無いし変な効果音も入ってない。しかし、生活音、人間を取り巻く自然な音を下敷きに繋がれる美しいモノクロの映像が見ていて飽きない。映像ですョ。 過剰な演出もなければ、ハラハラも無いし笑えないし胸が締め付けられるシーンすら無い。 半生を走馬灯の様に振り返った時の感じと云うのかな…ナレーションなしのドキュメンタリーみたいな。果たしてこれは映画なのだろうか。 そして今、湧き上がる疑問 「ん?何故アカデミー賞?」 そう、悪くは無いんだけどね。 ジム・ジャームッシュを初めて見た時のような、心が動かされた感じが1つも残らない。 鮮明な記憶は大量な犬の「う◎こ」 (何年経っても忘れない自信がある) クレオ役の女性はとても良い存在、 彼女の演技ではなくて在り方が素敵だ。 そう、もっと褒めたいし感動したい‼︎ 劇場で見ていたら、大きなスクリーンでどこでもドア的な立ち位置で鑑賞できたならば感想は大きく変わるだろう。 Netflixで配信なのは最大の残念な要素。 フルカラーで劇場公開されるならばもう一度見てしまうかもしれない。 しかし、まぁ星は3つである。
てっぺい
4.0
2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門金獅子賞、第91回アカデミー賞外国語映画賞、監督賞、撮影賞受賞作品。監督・脚本は「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン。キュアロン監督の半自伝的Netflixオリジナルヒューマンドラマ。 ◆ストーリー 70年代初頭のメキシコシティ。とある中産階級の家で家政婦として働く若い女性クレオは、同僚の恋人の従兄弟である青年フェルミンと恋に落ちるが…。 ◆感想 家族愛の1つの形。ある家族とその家政婦の日々の暮らしが淡々と描かれる中、いくつか起きる出来事が家族と家政婦の絆をゆっくりと深く結びつけていく展開に、なんとも言えない心の安らぎを覚える。 ◆以下自分の解釈かつネタバレ◆ ふとした出会いから身籠もるクレア。男には姿を消され、会いに行くも絶縁を叩きつけられる。気を乱したり葛藤する描写もなく、常に感情を表に出さない存在として描かれるクレア。この時代の動乱に巻き込まれ破水し、死産を迎えた彼女が家族との旅行に同行。旅先で起こる子供達の危機を救い、皆で抱き合う中に初めて出る彼女の本音、“本当は産みたくなかった”。 冷静な彼女が、新しい命を宿した事で、何よりも大切にしていた家族との関係が壊れるのを1番恐れていた事が間接的に吐露される、この映画の1番の山だったと思う。それまで感情を表に出さない彼女の人物描写がその強調にもなっていたし、彼女が身ごもった事を明かす時に何よりもまず気にしたのがクビかどうかだった事も、その事の裏付けになっていると思う。 要所要所で用いられている長回しもこの映画の特徴。前述の海で子供が溺れるシーンしかり、圧巻だったのはクレアが死産を迎えるシーン。分娩室に入ったところから、子供が生まれ、緊急手当、死産確定までがノーカットで描かれ、緊迫感が頂点。同時にこのシーンで、破水し胎盤がはみ出す痛みも気に留めず子供が気になるクレア、死んでしまった子供にかける言葉もないクレア、そして前述の“本当は産みたくなかった”という感情も含め、ありえないほど複雑な感情表現をこのシーンで見事に演じ切ったヤリッツァ・アパリシオにも拍手。彼女はこの映画で一躍有名になり、多数の賞を受賞したらしい。 はじめは淡々と描かれる日常に「パターソン」的な平坦展開かと身構えたものの、逆にそれが山のシーンへの大きな振りかぶりになってました。いい映画だと思う。ただ冒頭とエンド、そして武術練習場などのシーンで登場した飛行機。監督がこの映画に残したメッセージの1つだと思うけど、解釈が追いつかず…どなたか教えてください!
shimabukurock
見ている最中
とにかく撮影が素晴らしい。 淡々とし過ぎているくらいの物語と、リアルではあるけれどなかなか感情移入しづらい演技や設定に対して。 出来事を立体的に、実在感を持って捉えている。 観ている時にはどうってことない人物たちの感情が、しばらく経ってくるとズンと迫ってくる。 それを追うカメラ。まさに被写体との距離感と、時間を経て見つめる視点のバランス。 客観ショットのようで、たしかに「見つめている」というアングル。 1970年のメキシコ。富と貧困の格差と。民族の壁。女性の尊厳について。キュアロン監督の追憶の世界に浮かび上がるのは実に現代的な政治的メッセージ。 過去のエピソードから、実に現代の課題が見事に浮かび上がるのも見事。 主人公のクレオの床を掃除し、テーブルを磨き上げる、その美しさを画面が捉え。 まさに「磨き上げていく」映画だなぁと感動。メッセージを叫ぶことは一切せずに、出来事、視点、のみでここまで重層的な感情の物語、というのが実に映画的で、力強い。
ひろ
4.0
アルフォンソ・キュアロン監督・脚本・製作・編集によって製作された2018年のアメリカ/メキシコ合作映画 ・ 第75回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞 第91回アカデミー賞で外国語映画賞・監督賞・撮影賞を受賞した ・ 1970年のメキシコシティのコロニア・ローマが舞台。そこで暮らす中流階級の家庭とその家政婦の日常を描いた作品 ・ 映画評論家から絶賛され、数々の映画賞も受賞した作品だが、「ゼロ・グラビティ」でもオスカーで監督賞を受賞しているキュアロン監督。ハリー・ポッターまで監督した彼からしたら、この作品は賞レースを獲るために作った感じはしない。彼が育ったメキシコシティを舞台にした半自伝的作品で、こういう映画を撮りたかったという監督の熱意が伝わってくる内容だ ・ 全編モノクロだし、英語も使われていない。このような作品がオスカーで賞を受賞したことはない。しかもNetflix配給だから映画館での上映は少ない。それでも高い評価を得たのはすごいことだ。新しい時代がきた。モノクロって使いたがる人は大抵カッコつけなんだけど、この作品では時代的にも内容的にもモノクロの雰囲気がよく合っている。色にはたくさんの情報が込められているから、色がない方が内容に集中できる ・ 夫婦間がうまくいっていない中流階級の夫婦。子供は4人。家政婦は2人。主人公のクレオは子供の面倒見もいいし、よく働く女の子。そんなクレオにも家族にもいろいろあります。人生は楽しいばかりじゃない。笑ってる時もあれば鳴いてる時もある。辛くても辛くても生きていく。萎れた花も水を差せばまた咲く。折れた骨は前より強くなる。人生は美しい。そんなキュアロン監督のメッセージが映像美と共に物語られる。特にジャケットにも使われている波打ち際のシーンは最高に美しいシーンだった ・ こういった賞レースのために限定劇場公開している作品への賛否はあると思う。スピルバーグが映画は映画館で観るものだという強い信念からNetflixを批判している気持ちはよく分かる。電子書籍より紙の本が好きだという感覚と似ている。でも面白いものは正義だというのもうなずける。名監督が好きなように撮った作品なんて観たいに決まっている。なんならスピルバーグにもNetflixで作品を作ってもらいたい。映画館で観る映画が最高であるのは揺るがないが、面白い作品が誕生するなら今後も目を瞑りましょう
Non_Corleone
4.0
私たちが思い出すとき、あの世界は色付く。
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