イタリア系移民であるエミリオ・ダレッサンドロは、才能溢れるレーシング・ドライバーとして、将来を嘱望されていた。しかし、新天地を求め移住したロンドンではレーサーの職は得られず、タクシー運転手として家族と平凡な生活を送っていた。1970年、ある雪の夜、ホークフィルムという会社からエミリオに「人ではなく、ある“モノ”を撮影スタジオに運んで欲しい」という奇妙な仕事の依頼が入る。悪天候に加え、その物は車に積むには大き過ぎたが、エミリオはなんとか無事にスタジオまで送り届ける。映画に興味のない彼は、そこで何が行われ、直接の雇い主が誰かなど特に気にはかけなかった。だが後日、そのホークフィルムから、社の代表が挨拶したいと連絡が入る。それがスタンリー・キューブリックとエミリオとの最初の出会いであった。レーサーとしての実績を知っていたキューブリックは、自分の専属運転手として雇いたいと申し出る。エミリオは快諾、翌日からアボッツ・ミードにある監督の自宅兼スタジオに通うことになる。30年にも及ぶふたりの奇妙な友情はこうして始まった……。
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