クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代

“時代には芸術を、芸術には自由を”。これは、グスタフ・クリムトを中心に結成された芸術家グループ“分離派”が、1898年に建設した展示施設・分離派会館の入り口に金文字で掲げたモットーである。19世紀末から20世紀初頭のウィーン。クリムトとエゴン・シーレは人間の不安や恐れ、エロスを描いた新しい手法を通じて、それまでの絵画とは異なる革新的な作品を次々と生み出していった。金箔を多用し、妖艶で死の香りを漂わせるファム・ファタルを多く手掛けたクリムト。ねじ曲がった体躯と苦悶に満ちた表情で克服できない傷みを描いたシーレ。異端なテーマは、精神医学者ジークムント・フロイトが辿り着いた精神分析の誕生と時を同じくして世に現れた。同じ頃、音楽や建築、文学にも新しい概念が見出され、女性たちはコルセットを脱ぎ捨て、自立を主張し始める。封建的なウィーンで、抑えられていた人々の衝動が一気に爆発したかのように社会秩序を揺り動かし、自我の本質への対峙が始まる。本作では、クリムトやシーレの傑作を所蔵するウィーンを代表するアルベルティーナ美術館、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、美術史美術館、分離派会館、レオポルド美術館、ウィーン博物館、ジークムント・フロイト博物館を巡りながら、ウィーンの黄金時代の始まりと終わりを解説する。