棚の隅

棚の隅
2006
81分
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ある雨の日。小さなおもちゃ屋を営む康雄(大杉漣)の店に、ひとりの保険外交員が現れる。それは八年前、康雄と別れた妻――正確には男をつくり、夫と幼い息子・毅(今井悠貴)をおいて、蒸発同然に家を出ていった前妻の擁子(内田量子)だった。最近、康雄の店の界隈を担当することになった彼女は、ばったり顔を合わす前に挨拶をしにきたと告げる。そして棚の隅から売れ残りの古いおもちゃを買って出ていった。以来、擁子はたびたび康雄の店を訪れる。そしていつも同じように、売れ残りのおもちゃを買っていくのだった。今は再婚し、息子は継母の秀子(渡辺真起子)に実の母親以上になついている。慎ましくも幸せに満ちた平穏な生活を過ごしている康雄は、突然あらわれた元妻の不可思議な行動に心さわぐ。一方の擁子は、新たな恋人・進藤(榊英雄)との生活に割り切れないものを感じていた。深い愛情で包み込んでくれる進藤の求婚を、素直には受け入れられない自分がいる。彼女の心の中には、残してきた毅の面影が強く刻まれていた。そしてわが子への思慕が、もう再び元には戻れないとわかっていながらも、彼女を康雄の店へと向かわせていたのだった。そんなただならぬ事情を薄々察しつつ、ひとりの客として擁子を迎える秀子。擁子は秀子に、遊園地のチケットをプレゼントした。そして進藤もまた、過去に引きずられる擁子の行動に気付き、康雄の存在を突き止める。そんな中、経営難から店をたたむことを決めた康雄。壊れたラジコンの飛行機を夜を徹して修理し、毅とともに大空へ舞い上がらせたその夜、康雄は秀子に新しい仕事を探すことを切り出す。秀子は、夫が逃げるわけではないことを確認した後、この苦渋の選択を受け入れる。休日の遊園地。そこには久しぶりの一家団らんを過ごす康雄たちの姿があった。また進藤に連れられて擁子も同じ場所に来ていた。進藤は、擁子が過去を清算できるよう、康雄の元へ送り出す。一方の康雄も、ずっと心の隅に置き忘れていた思いを、擁子に告げる機会を待っていた。ついに康雄と擁子が言葉を交わすときが訪れる。康雄は擁子を観覧車に誘った。そして高みへのぼっていくゴンドラの中で、康雄は溢れる想いを口にする……。

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