シシリー島の小さな町の朝まだき、生地商のイグナツィオ・ブロカ(T・フェルロ)は、アントニオ(J・チリッジィ)十八歳、ニーノ(A・モモ)十四歳、エンジーノ七歳の三人の息子を残してこの世を去った妻の葬儀をとどこおりなく終えたところだった。表面、悲しみをよそおっているものの、彼の心の中には病弱でヤキモチ焼きの女房が死んだ安堵感があり、しかも近所の大金持ちの未亡人コラロ(A・ルース)の挑発もあって、自然と頬の筋肉がゆるんでくるのを押さえるのに一苦労というところだった。だがそんな状況を一変するような事態が発生した。