殺人者の顔

殺人者の顔
1950
100分
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キャバレー「火の鳥」の用心棒三郎のパンチには、そのへんの与太者はみなおそれをなしていた。三郎は、いつも暗いかげを持った男だった。そして、パンチをふるう時には、冷酷なまでに、まるで、自分自身をやっつけるように鋭くやるのだった。なぜ--それは彼が生ける屍であったから--。彼は復員して帰ってきた時に、彼は死んでいたことになっていた。それから彼の虚脱した生活が始まった。心の底には善意があるのに--。彼と今、同棲している静江は、ダンサーで三郎に、泥沼のふちから、救われてから、づっと一緒にいるのだが、三郎の乱れた生活を、なんとかしたいと思っている。静江の叔母は静江に「あんな男と別れてしまいよ」と、長井という金貸しの男とつき合うようにすすめるが、静江の心はしっかり三郎とむすびついていた。たとえ三郎の心がうつろになっていても--。そのころ三郎は、拳闘で金を得ようとしたアルバイト学生のボクサー田辺と闘ったとき、鋭い一撃を加えて、そのため田辺は死んでしまった。三郎は、殺人を犯したという自責でかえって荒らんで酒をあおるのだった。静江は三郎とまともな家を持ちたいと、長井に近付いて金を出させ、そして三郎を驚かせようとひそかに家を買った。だが三郎はその家で真面目に暮らそうとはせずやはりアパートにいるのだった。そして死んだ田辺の家に、金を送ろうと、長井を訪ねて、体を担保に金を借りて田辺の妹に贈るのだった。長井は三郎の体をつかってある会社の重役に貸した金の返却を迫り、三郎は長井におどらされて、無意識にその重役を脅迫した形になり、その重役は毒薬をあおって死んだ。又も三郎は、間接に殺人を犯した自責に苦しむのだった。ますます三郎は荒らんだ。その頃、静江は、三郎の子供を宿した、と訴えた。三郎は気が狂ったように、「俺のような人間の子供を生むな。おろしてしまえ!」と静江にせまり、静江は逃げたひょうしに階段から落ち、更に夜の街へ逃げた。追って出た三郎は静江の姿を見失い、彼を慕う靴みがきの青年三谷と、夜の町を静江を探している時、ちょうど、宝石商を襲ったギャングとぶつかり、三郎のパンチはうなってギャングを捕まえた。アパートの人はこんな時は、三郎をちやほやしたが、三郎はますます沈んでしまう。三谷は突然三郎に、「俺結婚するんだ、だから立ち会ってくれ」という。三郎は目をみはった。三谷は夜の女と一緒になるという。そして生活を真面目に考えているのだ。なぜか三郎は静江が恋しかった。ちょうどその時静江が病院に入れられたことを知った。驚いた三郎はとんで行ったが、すでに子供はだめだった。でも静江は元気で、はじめて三郎の人間らしい温かいひとみにふれて、明るかった。いよいよ三谷の結婚の日、静江は病院から、三郎はアパートから教会へ向かった。三郎は、三谷へ贈る指輪を買って店を出るとき、小さな子供が自動車にひかれそうになり、それを助けるためにとび出して、自らは死んでしまった。教会では静江が、三郎の来るのを待っていた。

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