ベニスに死す
Morte a Venezia
1971 · ドラマ/ラブロマンス · イタリア
130分



1911年のヴェニス(ヴェネチア)。ドイツ有数の作曲家・指揮者であるグスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は休暇をとって、ひとりこの水の都へやってきた。蒸気船やゴンドラの上で、さんざん不愉快な思いをしたアシェンバッハは、避暑地リドに着くと、すぐさまホテルに部屋をとった。サロンには世界各国からの観光客があつまっていた。アシェンバッハは、ポーランド人の家族にふと目をやった。母親(シルヴァーナ・マンガーノ)と三人の娘と家庭教師。そしてアッシェンバッハは、母親の隣りに座った一人の少年タジオ(ビヨルン・アンデルセン)に目を奪われた。
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マ-サル
4.0
美少年に並々ならぬ魅力を感じる人間なので、主人公の気持ちに尋常じゃないほど感情移入してしまった。私もあんな美しい存在に出会ったら同じような言動をとる自信がある。だからこそ彼の美しさに溺れて行く主人公を見て「おい、おい、変質者みたいだぞ、やめなさい。あぁ、何手をだしてるんだ!触ったら駄目だぞ捕まるぞ!」と気が気ではなかった。美しいものに罪はないが、だからこそなんと罪深いのだろう…。主人公や私のように、その美しさに魅了された者は生殺しのまま幻想を追いかけ、死に至るのだ。
アリちゃんパパ
3.5
老作曲家がヴェニスで美青年に恋をし、死にゆく姿を描いたルキノ・ヴィスコンティによる耽美的な名作です。 当時高校生だった僕は、美しい映像に見惚れはしましたが、老人の美青年に対する恋という倒錯した世界について行けませんでした。それは年老いた今も変わりはしませんが、ビョルン・アンドルーセンの美しい姿は、今も目に焼き付いています。
矢萩久登
5.0
早稲田松竹クラシックスvol.235/『退廃する街で』と題した特集上映にてフォルカー・シュレンドルフ監督『ブリキの太鼓』(1979)、ルキノ・ヴィスコンティ監督作品『ベニスに死す』(1971)の2本立て鑑賞。 『ベニスに死す』(1971年/130分) 記者会見でルキノ・ヴィスコンティ監督からまさに『世界で一番美しい少年』と絶賛されたタジオ役のビョルン・アンドレセンのその後の人生を追ったドキュメンタリー『世界で一番美しい少年 The Most Beautiful Boy in the World』(2021)とセットで鑑賞。 貴族出身で名匠と誉れ高いヴィスコンティ監督らしい気品高く耽美で退廃的な作品。 主な舞台になるベニスのホテルや街並みが光り輝く観光地から疫病により輝きを失う様や、海と空の青さ、音楽もマーラーの交響曲が主人公・グスタフ(演:ダーク・ボガード)の激しく揺れ動く心情を音楽で表現、もう一人の主人公といっても過言ではないですね。 『地獄に堕ちた勇者ども』(1969)、『愛の嵐』(1974)の名優ダーク・ボガードのタジオへの一途な愛情、かなわぬ想いへの苦悩、老いに対する抗いを見事に演じきっております。 そして本作を不朽の名作たる映画に押し上げたのはビョルン・アンドレセンの同性でも息を呑む秀麗さ、セリフはほとんどありませんが、グスタフを魅了する容姿には世界中誰もが納得したことでしょう。 ヴィスコンティ監督の審美眼の確かさと、ビョルンの少年から大人への一瞬の儚さを逃さずフィルムに焼き付けた奇跡的な出会いを感じますね。 本作以降「世界で一番美しい少年」と絶賛されたビョルンはステージママ(祖母)の強い意向もあり、本意ではない日本での歌手デビューをはじめとするアイドル活動や、醜い大人たちに翻弄され性的搾取も経験。 その際の心の傷からか老齢の彼は「美」に抗うかのように、全く身だしなみに無頓着で長髪に長髭、誰もがあの「世界で一番美しい少年」とは気がつかない風貌に変わり果て、『ミッドサマー』(2019)にも出演し衝撃を受けましたが、時より見せる眼差しは、やはり美男子です。 祖母の勧めに応じずオーディションを受けなければ、全く違うミュージシャンとしての明るい未来があったかもしれない、実に悲しい事実。 「ベニスの死す」という光が強いほど影は濃くなってしまうのでしょうか。
hanako
4.0
2025/4/27 “中年のおじさんが美少年に魅了されて死ぬ話”っていう雑な前知識だけで見てました。(すみません) 観終わって、名作たる由縁はとても感じた。あの時代のあの監督のあの瞬間のビョルン・アンドレセンでしか成立しない唯一無二の作品だわ。リメイク不可能。 ◆ 朝焼けの海から始まる冒頭のシーンは、絵画的な美しさに音楽の壮大さも加わり感動。靄がかかったようなベニスの景色も幻想的だし、現実離れしたこの物語と重なって象徴的。 中盤でおじさん(アッシェンバッハ)が欲望と理性のバランスを保つためにベニスを離れようとするのでビックリしたけど、トラブルでベニスに足止めになったことに喜びが隠しきれてない。ここの溢れる嬉しさの演技は素晴らしかった。笑 セリフが少ない作品だからこそ、演技が光りますね。 ◆ 美少年のタジオもタジオでアッシェンバッハに流し目や笑顔を送ってくるのだけど、もはやそれすらアッシェンバッハの妄想の可能性あるなと途中から思ってました。そもそもタジオは何者なのか。美と死の象徴的存在で、実在しないのかも。誰もが目を離せなくなるような美少年なはずのだけど、アッシェンバッハ以外の人たちは彼に対して至って普通の態度なことからも、アッシェンバッハ(またはビスコンティ)のフィルターを通したタジオしか見せられていないのだと思う。 ◆ 終盤は、アッシェンバッハが超えちゃいけないラインを超えないかというハラハラを楽しみました(←違う)。と思ってたら、まさか2人が言葉を交わすことすらなく終わるとは思わなかったので、これは予想外だった!とりあえず心の中でずっと思ってたのは「海水浴場で1人悶々とするこの挙動不審な中年、誰かどうにかしてくれ!」笑 理容室で若作りのメイクされたアッシェンバッハは、昔のドリフコントみたいで思わず吹いてしまったよ。(シーン的には笑えなくて、割と恐怖!だけどね…) ◆ 最後の有名なシーンは、絶対的な美しさに打ちのめされますね…若さと、“神の創造物たる自然の美しさ”。黒い髪染めが汗で流れてきていて「老い」の醜さを際立たせてましたね。こんな時でもマーラーの音楽は壮大で美しくて、そのギャップがなんとも言えなかったです。ラストの人気がなくなったビーチは、かつて繁栄を極めたベネチアが衰退していくまさにその最中にあるということを象徴していて、醜く朽ちていくアッシェンバッハとも重なり、老いと美しさというテーマを強く感じました。 ◆ この映画を成立させているのは何と言ってもビョルン・アンドレセンの美しさ…本当にため息の出る美少年でした。
toa
3.0
タージオとベニスの潮騒は綺麗だが、その美は刹那的なもの、いや刹那的だから美しいのかも。 幻影を額に入れて眺めるのは個人の自由だけどさ。 それを背負うのも背負わせるのも酷だ。
LIBRO
2.5
映像は綺麗で見入る。ただ、ゆったりとした映画であり、原作がトーマス・マンなので、テーマが難しい。また、そのテーマを面白く見せようとしてないので、面白くは無かった
星ゆたか
4.5
2022.12.19 【座談会レビュー】第22回 「世界で一番美しい少年」というドキュメンタリーで、あの「ベニスに死す」に15歳で出演したビョルン・アンドレセンさんの波乱のその後の人生を紹介されていたので、その本元の映画の座談会です。 メンバーは星ゆたか、光みちる、風かおる、雲かすみ、雨あられ、水きよしさんの面々です。どうぞ宜しく😉👍🎶。 (星)そのドキュメンタリーもですが、ビョルン・アンドレセンさん。 「ミッド・サマー」(19)でヘンテコな儀式で自害する老人役が彼だったと知らされ。 『えぇ~!!』あの美少年がって、世界中の特にこの「ベニスに死す」を知っている人々は驚かされたんじゃないかな。白髪の長い上にアゴヒゲの顔からはとても想像できないもの。 (光)ルキノ・ヴィスコンティ(1906~1976)監督が本作映画化するにあたって、欧州の各地を探し回ってスウェーデンでやっと、求めていた少年だったんですもんね。 主演はダーク・ボガード(1921~1999)監督の演出について次のように話してます。『完璧主義というより緻密なんだ。子供の顔に当たるグラスや皿の反射など、細かい所までこだわる。』 監督は仕事が終わり帰ってから本を読み、眠りにつくのは大抵、日を越えた2時30分、それが私にとって最良の日なんだと言う。 (風)ビョルンは母親が11ケ月違いで異父妹を生んでいるボヘミアン。だから彼は父親を知らない家庭に育ち。その母親が窓辺で何も見えない暗闇をずっと眺めている姿を見て。 『僕が早く大人になってママを守ってあげよう』と思ったそう。でもその母親が彼が10歳の時失踪、数ヶ月後森で遺体で見つかるという、子供の心に大きな穴を開けた事件があったらしい。 (雲)何が何だか分からないまま、外国へ行けるというので映画に出演になったとか。原作はトーマス・マン。1912年に出版されている。主人公の作家アシェンバッハがベネチアで、出会った美少年に対する慕情を描いた物語。多分これは私の想像だけれども。ビョルンに対してヴィスコンティ監督が、『心の底で慕いする父親のような人に巡りあったんだよ。気になって見つめてウッスラ微笑みたくなるだろう』なんて演技指導したんじゃないでしょうか。 (雨)格調ある映像美で、今ならボーイズラブドラマ好きな女子にゾッコン映画になりますかね? 日本では71年(昭和46年)に公開「ある愛の詩」「小さな恋のメロディ」などが大ヒットして、この映画のビョルンくんは少女漫画にも多大な影響与えたそうです。例えばあの「ベルサイユのばら」など。これはこの漫画の作者・池田理代子さんが語ってました。 (水)そのビョルン兄妹を育てた祖母が熱心なステージママで、この映画の公開後人気の出た彼の日本行きを薦め、明治チョコレートのCMや日本語の歌の発売なども実施したらしいですよ。しかしこういう可愛らしい文化にいち早く飛びつき流行らせるパワーのすごいこと。日本人の特に女性は。 現在のビョルンさんは波乱万丈の人生のその後、妻子と一緒に自分は音楽教師をして暮らしているそうですね。 (星)ビサンチンの甘美さとゴシックの力強さが融合する街。アドリア海の花嫁と謳われたベニスをこよなく愛するヴィスコンティ監督。 原作は作家としての存在形式を、自己克服によって築いた主人公が、内面の空洞化と共に破滅するデカダンス現象を描いたものとして評価されました。 映画としては親友のデザイナー、ピエロ・トージの衣装が素晴らしいですね。その空間背景と密着してまるでイタリア絵画の名画を見ているよう。 豪華絢爛たる洋服・宝石と大きな帽子が当時の特徴だそうです。 撮影のパスクーレ・デ・サンテス。 冒頭の汽船が主人公を乗せて画面海面に浮き上がってくる光景場面から、観客を惹き付けてゆきます。 そこにゆったりと流れるグスタフ・マーラーの交響曲第五番アダージェット第四楽章。この曲を知ったということだけでも、数ある映画の中でも私はヴィスコンティのベストなんですが、皆さんの好きな作品もよかったら、一つずつ上げてもらいませんか。 (光)私は「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(42)監督デビュー作です。世界的評価は制作公開後三十数年経ってからという映画でしたけど(日本公開は1979年)。 また「ベニスに死す」の中では化粧した老人が船の上で話しかけてきますが、この変な化粧顔は、ホテルに訪れる男女混合の歌うたいの男もだし、さらに最後の主人公の“死に化粧”も同じ感覚でした。 (風)私は「白夜」(57)です。最初に見たのは、この作品より後に作られたロベール・ブレッソン監督作品(71)の方を東京の岩波ホールで見て、原作を気に入ってから、ヴィスコンティ版をNHKのTV放送で観賞したんですけど。 本作では主人公が自分の中の若い情熱と、初々しい芸術への息吹を少年から感化される様子が、思わずニンマリでした。さりげない表情やしぐさを、実に自然に見せてました。そこに監督の演出意図があるとか。 (雲)私は「夏の嵐」(54)かな。とにかく主演のアリダ・ヴァリさんには圧倒されました。 “ベニス~”ではコレラ発生を観光客事業で経済を回している街が、表向きに公表せず、しかし町中消毒液を撒き散らしてる辺りは本当に怖いです。 それと主人公の作曲家が幼い我が娘を亡くし、さらに仕事上でも酷評され、心身共々の憔悴した状況でのこの伝染環境ですからね。そのドラマツルギーの強さ! (雨)「イノセント」(75)でしょうか。主役のジャンカルロ・ジャンニーニさんがマルチェロ・マストロヤンニさんに似て好きなんです。この作品で舞台となったホテル〈デ・バン〉は閉鎖される冬の間に美術チームが改装して1911年当時の内装に作り上げたそうです。 (水)僕はアラン・ドロンの若い時の出演の「若者のすべて」(60)です。古い封建的な考えが新しい時代の中でどう変わってゆくかを見せられました。このベニスでは夏の避暑地の、しかもあの当時のクラシックな情景が、なんか新しい感じがしてクールでした。 (星)しかしこうやって聞いてゆくだけでもルキノ・ヴィスコンティ監督作品って、まだこの他にも色々な名作映画があって。「山猫」(63)「地獄に堕ちた勇者ども」(69)「ルードウィヒ・神々の黄昏」(72)「家族の肖像」(74)など有名です。 さすがミケランジェロ・アントニオーニ監督。フェデリコ・フェリーニ監督などとイタリア映画ならず、世界の映画界をリードしてきた、まさに“動く絵画”の殿堂入り映画人ってことでしょうか。 それでは今回もこれぐらいで サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。 ありがとう😉👍🎶ございました。
Eadi01
2.5
映像は非常に美しく、ワンシーンワンシーンが絵になる。 今のデジタル感では味わえない、深くあざかやな色味も美しく、タージオ家族などは貴族の絵画を見ているよう。母親のシルバーナマンガードは目が釘付けになる。 ただ、私が日本人だからか経験が浅いのか、クリムトの演技や描写が大袈裟と感じた。 タージオに見つめられるだけであんなによたよた歩きになるかなぁ?と冷めた目で見てしまう。 またクライマックスのクリムトだけは醜かった。クリムトのメイクが汗でドロドロ落ちる姿は、美しいタージオのカットと何度か切り替わり醜さが対比されて目を背けたくなった。 感情移入はなかったが、映像は素晴らしかった。
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