慶応二年、日本は激動期の真只中にあった。源次はそんな江戸へ六年ぶりにアメリカから帰って来た。上州の貧農の出の源次は横浜港沖で生糸の運搬作業中に難破し、アメリカ船に救けられ、そのまま彼の地に渡ったのだ。その間、妻のイネは、病身の父に売られ、現在、東両国の“それふけ小屋”(ストリップ劇場)で小紫太夫と名乗って出演している。源次はなんとかイネを発見、六年ぶりの再会に二人は抱きあった。見せ物小屋の立ち並ぶ東両国は、芸人、スリ、乞食、ポン引きなどアブレ者の吹き溜り。源次は三次、ゴン、孫七、卯之吉、旗本くずれの古川など、したたかな連中に混ってそこに居ついてしまう。