松波仙作は熊皮チョッキに乗馬ズボン、顔中ひげだらけのうえに裸足という出で立ちで北海道滝ノ上の山奥から東京へやって来た。体格のいい、見上げるような大男である。上京の目的は東京へ出たまま戻らない許嫁の桜栗子を探すためだった。しかし、東京のどこへ行ったらいいのかわからない仙作は荒涼とした埋立地へと来てしまった。前方のゴミの山のてっペんに女が立って歌を歌っていた。そのかたわらで男がピアノを弾いている。女は小山芳乃という歌を歌えなくなったオペラ歌手で、男は尻内といって秘密クラブのオーナーであった。尻内の栗子を知っているという言葉に誘われて、仙作はデスマッチを売り物にする「クラブ・ジョコンダ」に顔を出した。リングの上では2人の大男が殺し合いをしており、それをゲイのホステスや金持ちの客たちが面白そうに見物している。仙作はその勝者と対戦し、力まかせに相手をねじ伏せた。仙作は栗子が働いているという新宿のスナックを訪ねた。仙作との再会を素直に喜ぶ栗子だったが、それでも北海道へ帰る気はなかった。何かが栗子を変えてしまったのだ。