明治三十年の初秋--九州小倉の古船場に博奕で故郷を追われていた人力車夫の富島松五郎が、昔ながらの“無法松”で舞戻ってきた。芝居小屋の木戸を突かれた腹いせに、同僚の熊吉とマス席でニンニクを炊いたりする暴れん坊も、仲裁の結城親分にはさっぱりわびるという、竹を割ったような意気と侠気をもっていた。日露戦争の勝利に沸きかえっている頃、松五郎は木から落ちて足を痛めた少年を救った。それが縁で、少年の父吉岡大尉の家に出入りするようになった。
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