率直に言って、とても素晴らしかった。 中盤まではタイトルから予想出来る、コミカル＆スリリングなタッチが心地良いが、突然やって来る怒涛の展開に困惑し、戸惑いの最中に静かな終わりがやって来る。 困惑させる、と言うのが重要で、この演出が無かったら、夫婦を主軸にした重要なテーマが伝わらなかったのでは無いかと思う。 私の勝手な解釈だが、メインテーマは、頭の良い兄妹のようにうまく立ち回れず、欲望が勝ってヘタを打ってしまう中年夫婦と、事業で成功し当たり前のように豊かな暮らしを送る若い夫婦である。そして悲しむべきは単なる貧富の格差では無く、富裕層による差別が全く悪意無く、無意識で行われている事だ。使う側と使われる側では、主従関係があるのは当然だが、果たして人としての尊厳にまで触れる権利はあるのか。そして、富裕層と最下層が余りに近付き過ぎるとどうなってしまうのか。韓国の学歴至上主義や、手段を選ばない出世欲・成り上がりへの憧れに対し、中流層があってこそ社会が成り立っていると言う答えの向こうに、成功者の傲慢さを黙認する現代社会への強い問題提起が、あの展開に込められているのでは無いだろうか。