薄闇。男女が抱きあう。彼女(エマニュエル・リヴァ)がつぶやく、《私、広島で何もかも見たわ》彼(岡田英次)が答える、《君は何も見ちゃいない》病院、被爆者の顔、苦しみの図、あの影、焼けた石。博物館のきのこ雲の模型。平和広場。記念アーチ。橋や川。《何も見ちゃいない》午前四時だ。彼はあの時、夏休みで広島にいなかった。彼女は映画出演でパリから広島へきた。その前はイヨンヌ県のヌベールにいた。二人は偶然知り合った。彼は建築技師だ。彼女は広島の映画で看護婦に扮していた。《あしたの今頃、フランスへ発つの》二人はホテルの彼女の室を出た。《ヌベールで気が狂ったことがあるの》彼女が歩きながらいう。--病院の前で、彼女の映画のロケが行われる。