殺された兄の仇を求めて、谷三郎はキャバレー「ル・ボウ」にたどり着いた。そこでいわれのない喧嘩を売りつけられ、傷ついた身をマダム・ユキに介抱された。だが翌朝、昨夜の喧嘩相手仙吉が再び迎えに来た。岸壁での決闘、三郎に迫る拳銃。だが無事で帰ってきた三郎の姿に、ユキはなぜかほっとするのだった。ユキは仙吉の首領塚本の情婦だった。そして昨夜彼女の部屋で見た兄の遺品。そこに何らかの関係を見出した三郎は、やがて塚本、仙吉たちの密輸団に加わっていく。初めて三郎に真実の恋を感じたユキは、恋する者の敏感さで男の目的を知り、塚本の冷酷さに不安を感じるのだった。塚本は仙吉の失敗から、三郎に仙吉を殺せと命じる。が、密かに彼は仙吉を逃がしてやる。夜霧に光るドックの道に、今や拳銃を構えて闘う塚本と三郎だった。兄の仇!だが三郎の弾丸は尽きて、塚本に一歩一歩追いつめられる。轟然と塚本の拳銃が鳴る。しかし倒れたのは三郎の情にほだされた仙吉の姿だった。そこへ駆けつける警官隊のサイレンの響きが、勝ち誇った塚本の表情を崩す。傷ついた三郎は近づいてきたユキと、霧の中をかきわけるようにしてしっかりと抱き合うのだった。