花村理子(檀れい)は、奔走していた。アマチュアではあるが、18年の歴史を誇る弥生交響楽団存続のため……。急逝した父の事業を継ぎ、ひとり残された母親(檀ふみ)の世話をするため、ピアニストへの道を諦めて故郷の地方都市に帰った理子にとって、弥生交響楽団は厳しい現実を支える大切な夢だった。3年前から大学時代の恩師・藤堂(水谷豊)を指揮者に迎えたものの、客足は年々遠のき、苦しい運営が続いていた。創立当時から楽団を支援してきた鶴間(石丸幹二)と共に役所や金融機関に掛け合うが、なかなか協力は得られない。そんな折、コンサートの最中に藤堂が倒れる。個性豊かな楽団員たちの心をひとつにまとめていた大きな柱を失った弥生交響楽団に、不協和音が響きだす……。やむなく解散を決意した理子は、楽団のメンバーたちにラストコンサートを提案する。若い楽団員の圭介(町田啓太)やあかり(森マリア)も、音楽を愛する仲間の心をいま一度合わせようと奮闘するが、バラバラになっていくメンバーの足並みはなかなか揃わない。もはや修復不可能な状況に、誰もがコンサートを諦めかけたとき、入院中の藤堂からビデオレターが届く。そして起きる小さな奇跡……。燃え立つような太陽が西の空に消え、マジックアワーを迎えるとき。「ボレロ」の力強いリズムに乗せ、弥生交響楽団最後のそして最高のコンサートが始まる!