ある土砂降りの日。くたびれた男が立つ台所には、たまねぎ、にんじん、じゃがいも、豚肩ロースなど、見慣れた食材が並んでいる。毎年、妻の誕生日の三日前から特製カレーを仕込むのがならわしになっていた。愛聴しているラジオ番組では、リスナーのマル秘テクニックを募集。男はガラケーを手に取り、コンロでぐつぐつと音をたてる“三日目のカレー” についてメールを綴り始める。