ソビエト・ウクライナの農村。実った穀物が風に波を見せて動き、向日葵の大輪が咲いている。林檎は水々しい淡紅色の顔を枝の繁みから窺わせ農場は見渡すかぎりの豊作である。一人の老人がこの農場の片隅、果樹の樹陰に横っていた。彼は七十五年の鍬と鋤の生活から今や永遠の眠りに就こうとしているのだ。老人は林檎を噛った。だがその老顔に微笑が浮んだと思った瞬間彼の体は忽ちがくりと崩れた。