ティーンエイジャーの一人息子と小綺麗な家に暮らし、健康で礼儀正しく、概ね身だしなみもいい一見何不自由ない弁護士の男。しかし、彼の妻は不慮の事故により、昏睡状態に陥っていた。その日常は妻を想ってベッドの隅で咽び泣き、取り乱すことから始まる。彼の境遇を知り、毎朝ケーキを差し入れる隣人、割引をするクリーニング屋、気持ちに寄り添う秘書など、同情心から親切になる周囲の人々。この出来事がもたらした悲しみは、いつしか彼の心の支えとなり、次第に依存してゆく。そんなある日、奇跡的に妻が目を覚まし、悲しみに暮れる日々に変化が訪れる。やがて楽園を失った男は自分自身を見失い、暴走していく……。