1913年、「私」は南フランス・プロバンスの山岳地帯を歩いていた。そこは荒れ果て不毛の地となっていて、僅かに暮らす住民たちは荒んだ生活を送っていた。ベルゴン村を過ぎ山へと進んだ私は、疲労と脱水により遭難しかけるが、初老の羊飼いと出会い救われる。男は村を離れ独りで暮らしていた。男の家に泊まることとなった私は、夕食後男がドングリの実を選別するのを見る。そうして傷んでいないドングリを100個揃えた男は無言で床に入った。そのことに興味を抱いた私は翌朝出発を先延ばしにし、男と共に山に出かける。羊の世話を番犬に託した男は、持っていた鉄製の杖を使い地面に小さな穴を掘り、そこにドングリの実を埋める。この土地は男の物かと問うた私に、男は違うと答える。所有者すら知らない不毛の土地に男は、丁寧に100個のドングリを埋めていくのであった。昼食後男はまたドングリの選別を始める。しつこく質問する私に男はようやく重い口を開く。