昭和2年、21歳の貞子は女衒の岩伍に買われ、高知の妓楼『陽暉楼』へ身売りされる。永年の女衒稼業を続ける岩伍は、これまで1度も身売りされる娘やその親に同情したことはなかったが、貞子の初々しさには何か心にひっかかるモノがあった。早速「牡丹」という源氏名が付けられた貞子は、女将のみねのもとで芸事の特訓をさせられる。岩伍は先ず一安心だった。苦界といっても『陽暉楼』なら、それなりの格式もあり客質も上等だ。