すずしい木陰

すずしい木陰
2019 · ドラマ · 日本
96分
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たとえばその中古車屋の娘は、いつまで経っても子供みたいなヤツで、もうすぐ30歳になろうというのに、家でゴロゴロ、昼過ぎに起きて、朝食だか昼食だかを済ませる間にも、2、3時間テレビの前でぐうたら、食ったら食ったでそのまま履き潰したサンダルをつっかけ、家の裏の雑木林の隅っこにある、中古車屋の喫煙所みたいになっている一角に何年も吊られっ放しの、雨曝しのハンモックにぼよんと転がり、起きるでもなく眠るでもなくボーッと、生い茂る木々の葉っぱたちを眺めているように見えて、実は今後の人生に思いを巡らしながら、ふと頬を風に撫でられた途端、宇宙のことを考え出し、夏の空に伸び広がる天気輪の柱を見た気がしたのだが、やがてそんなこともどうでもよくなり、いつの間にかうたた寝をはじめ、今日もまた陽が暮れてゆく……。実は“うたた寝をしているのは中古車屋の娘で……”といったストーリーは、この映画にはなく、ただただ女の子が寝ているだけ。物語らしいことは何も起きない。にもかかわらず、確かに何かが起きている。“見つめる”行為の向こうに、何かが立ち現れてくる……。

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