1821年、オーバー・ヘッセンの森の中。一台の税金輸送車が馬に引かれてゆく。その道をはさんだ両側の林の中に見すぼらしい7人の男たちが潜んでいる。彼らはコンバッハの貧しい百姓と日雇いである。農奴制が廃止された1821年以来、新しい税金、穀物価格の下落、不作が重なって彼らの困窮ぶりは一層激しくなり、思いあぐねた末に“輸送車襲撃”を考えついたのだった。そして無教養な彼らは、アメリカを天国のように思いこみ、盗んだ金で渡米しようと考えていたのだ。しかし、雪や霧にはばまれて、彼らは5度も襲撃に失敗しており、失敗するたびに、とぼとぼと家族の待つ家に帰ってゆくのだった。そして6度の襲撃で、やっと彼らは金を手に入れることに成功する。しかし歓喜に酔いしれるのもつかの間、貧乏人の彼らは金の使い方を知らず、急に派手にふるまったことから忽ち怪しまれ、捕われてしまった。ギーセンの予審判事は鋭く審問する。7人のうち、4人が進んで処刑を受け、2人が公開処刑を免れるため自殺し、唯一人ユダヤ人の靴下商人だけは裁判権が及ばず、霧の中に踊りながら去ってゆくのだった。