かつて一世を風靡した大女優・藤原千代子。三十年前忽然と銀幕から姿を消し、人里離れた山荘でひっそりと暮らしていた彼女の元に、時を越えて古びた小さな鍵が届けられる。鍵が記憶の扉を開くように、千代子は昔を語りはじめる。漕ぎ出すは、記憶の大海。その物語は千代子の生きた現実の時の流れから溢れだし、“映画”という幻想の海流を通って、太古から未来まで広がってゆく。そして、閉ざされた想い出に隠された千代子の情熱が浮かび上がってきた……。