昭和一ケタ生まれで今や定年間近となった吉田健児は会社帰りのホロ酔い気分で駅に向かう途中、TV番組の女性レポーターに声をかけられた。彼女のインタビューに快く応じた健児は仕事場に案内し、自らの生いたちを語るがその時突然健児はバッタリ倒れこんだ。病院へ運ばれた健児は気を失ったまま、過去の記憶の深い霧の中をさまよっていた。昭和20年3月、小学生の健児たち6名は疎開先の長野の寺から両親や兄弟のいる東京をめざして脱走した。