一六一七年八月、幼王ルイ十三世がフランスを治めていたころ、ドムブ県の寒村シャティヨンに黒い大きな帽子をかぶった一人の僧が現れた。それはド・ゴンディ夫人のざんげ聴聞僧であったヴァンサン・ド・ポール師父で、都での職務を辞し、ひそかにこの寒村の教会の牧師に任命してもらって来たのであった。ところがペスト患者が出た村では、各戸が戸も窓も閉ざして、通りかかった師父に石を投げつけるという血迷いようであった、教会を訪れると聖像にはくもの巣がはり、聖水盤には牝鶏がすわっている有様、やむなく村の城主ベエニエ殿の館を訪れると、門を閉ざした中では宴会の最中であった。