1897年、パリ。詩人で劇作家のエドモン・ロスタンは、まだ30歳手前ながら、子どもを2人も抱え、生活に不安を感じていた。既に2年もスランプに陥り、万策尽きた彼は、名優コンスタン・コクランに、年末の上演のため、英雄喜劇を提供しようと持ちかける。しかし、そこには気がかりなことがひとつだけあった。その新作は、まだ1ページも書かれていなかったのだ。唯一決まっているタイトルは、『シラノ・ド・ベルジュラック』。そんな中、エドモンは親友の二枚目俳優レオの身代わりとして、彼の愛する女性ジャンヌと文通をすることに。すると、ロマンチストで才気あふれる親友の想い人との手紙のやりとりからインスピレーションを得て、新作の筆も進み始める。やがて、劇場ポルト・サン=マルタン座には、借金だらけの俳優や一癖も二癖もある大女優、起死回生を図る崖っぷちの舞台人たちが集い、エドモンたちの人生を賭けた舞台の稽古が始まる……。