大阪天満御前町の紙屋治兵衛は、女房子供のある身で、曽根崎新地紀伊国屋お抱えの遊女小春と深く馴染み、情死のおそれもあった。これを案じた治兵衛の兄粉屋の孫右衛門は、武士姿に仮装し、河庄に小春を呼び出した。孫右衛門は、小春に治兵衛と別れるようさとし、その本心を問いただした。小春は治兵衛と死ぬ積りはないと言った。折から、この里を訪れていた治兵衛は二人の話を立聞きし、狂ったように脇差で斬りこんだ。