香華
The Scent of Incense
1964 · ドラマ · 日本
203分

〈吾亦紅の章〉明治三十七年紀州の片田舎で朋子は父を亡くした。三歳の時のことだ。母の郁代は小地主須永つなの一人娘であったが、大地主田沢の一人息子と、須永家を継ぐことを条件に結婚したのだった。郁代は二十歳で後家になると、その美貌を見込まれて朋子をつなの手に残すと、高坂敬助の後妻となった。母のつなは、そんな娘を身勝手な親不孝とののしった。が幼い朋子には、母の花嫁姿が美しくうつった。朋子が母郁代のもとにひきとられたのは、祖母つなが亡くなった後のことであった。 〈三椏の章〉関東大震災を経て、年号も昭和と変わった頃、朋子は二五歳で、築地に旅館“波奈家”を開業していた。朋子の頭の中には、江崎と結婚する夢だけがあった。母の郁代は、そんな朋子の真意も知らぬ気に、昔の家の下男八郎との年がいもない恋に身をやつしていた。そんな時、神波伯爵の訃報が知らされた。悲しみに沈む朋子に、おいうちをかけるように、突然訪れた江崎は、結婚出来ぬ旨告げて去った。