
星ゆたか

하늘을 걷는 남자
평균 3.3
2022.6 1974年8月7日、米国・ニューヨーク。 ワールド・トレード・センターのツインタワーの間に張られたワイヤー線の上の(地上411m両幅43m)綱渡りを決行、そして成功させた人物の実話の映画化。 仏国人フィリップ・プティ(1951年生まれ)は、8歳の時当時世界一の綱渡り一座と呼ばれた人達の妙技に魅せられた。始めは近くの沼の木の枝に、5本のロープを張り巡らして渡り芸を試みたという。そしてそのサーカスの一座のリーダー、ルティ・オークマンコウスキー(パパルディ)にバランス、ジャクリンク、また芸の心がまえ(観客に心から感謝と敬意を示す)などを学び試みた。 やがて路上芸人として青年に成長した頃、同じ路上でギター弾き語りをしていたアニーという同じ年頃の娘と仲良くなる。17歳の時新聞でアメリカの当時世界一高いビル建設のニュースに衝撃を受け、それこそ神のお告げとすら思ったという。 その後1971年パリのノートルダム大聖堂の二つの尖塔に。1973年にはオーストラリア・シドニーのハーバーブリッジの鉄塔での二度にわたる違法綱渡りを実施した。結果警察の取り締まりも受けた。 そして1974年1月にニューヨークにやってくる。その頃には、彼の賛同者3人とアニーの計5人になりタワー完成間近の8月決行計画に、さらに地元の協力者3人を加え、着々と準備を進めていった。 この映画の凄い所は、もち論後半のハイライトの綱渡りなんだが、中盤のその準備段階のハラハラどきどきが半端ない! あたかも銀行強盗の犯罪ドラマを見ているような緊張感だ。 工事中のビル、かたや既に営業活動をしている中、防犯警備の目を盗んで主人公と仲間が、一つ一つ計画敢行のために行動してゆく。綱渡りも凄いことなのだが、社会の違法行為を成し遂げる、それは他人に少なからず迷惑をかけることで、本人も仲間もそれは重々承知している。だからこそ言動一つ一つに善悪のはざまの緊張が襲いかかる。 しかしながらそれ以上に、この綱渡りは人間の限界をかけての夢でもあり、本当に選ばれた人にだけ実現可能なことだから何とか成功させたいとも思う。 周到なる準備と、本人の自身の技量への謙虚なる自信。高さと幅の空間、空気と時間の世界との調和への完成。 でも最悪の結果を考えたら、やはり止めるべきだろうか?といった葛藤が最後まで尽きない。それは実際の現場にいた人の気持ちであり、見せられている観客の正直な思いでもある。 監督は1952年生まれのロバート・ゼメキス。学生の時に書いた脚本がスティーヴン・スティルバーグの目にとまり、その後78年に「抱きしめたい」で監督デビュー。85年の世界的ヒット「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で注目され、94年「フォレスト・ガンプ/一期一会」でアカデミー監督賞を受ける。 主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットは1981年生まれ。実際にフィリップ・プティの指導を受けての熱演だ。 まさに目のくらむ、とても信じられない偉業の興奮の映画だが。 2001年9月11日。あの日ちょうど自宅にいて、テレビをかけたら‥‥。 アメリカ同時多発テロ事件で、まさしくあのワールドトレードセンターに旅客機の衝突映像のニュース報道が。釘付けになった。あの日の部屋の空気の生ぬるさすら思い出せる。 あのビルにかつて、フィリップは自分の名前と偉業の日にちを記入した。 それ以来どれだけの多くの人びとが、どれだけの思いと記憶を刻んだかと思うとなおさら感慨深い。 ラストのビルの光彩が、いつまでも心に焼きつき、愁傷の思いに落ち込まされてしまった。