
Masatoshi

더 파더
평균 3.7
時に夢の中では、それまで見ていた内容が不条理に変化することがあっても妙に納得出来、そのまま夢を見続けることがあります。この作品はまさにそんな夢のまた夢の中の出来事のように場面がぐるりと展開していきます。やがて、それは認知症のアンソニーの頭の中で繰り広げられる過去と現在の混沌とした世界なのだと気付かされます。 認知症をこんな風に表現出来る才能を持つ映像作家って、一体どんな閃きと思考回路を持った人なのだろう。 フローリアン・ゼレール。フランスでは幾つかの賞を受賞している著名な作家であり劇作家だそうです。そのひとつ、モリエール賞で最優秀脚本賞を受賞した舞台『Le Pe’le 父』をゼレール自ら、アンソニー・ホプキンスに当て書きした脚本で初監督したのが、この『ファーザー』だそうです。 確かにとても文学的であり、それだけでなく、観ていて次第に目が離せなくなってしまう予想外の展開と演出、その主題の核心を完全なる演技で表現する感性、それは、まさに、フローリアン・ゼレールとアンソニー・ホプキンスの才能のぶつかり合い。第93回アカデミー賞で脚本賞・主演男優賞を受賞したのも頷けます。 腕時計に執着するのは時間感覚を失う事への恐れなのか、認知症による現実と妄想との狭間でもがくアンソニー・ホプキンスの演技は非常にリアリティに溢れ、これまでの経歴のなかでも称賛に値する最高の演技だったのではないでしょうか。 また、娘アンを演じたオリヴィア・コールマン、認知症の父親を介護し、愛情と虚しさ、自分の人生、その葛藤に苛まれる姿には思わず感情移入させられてしまうほど。さすがアカデミー賞主演女優賞を受賞されている女優さんだと思いました。 人間の自分が自分でなくなる事への喪失感と、最後まで父親と娘との間で思うように気持ちが噛み合わない現実は切ないですが、ラスト、一瞬垣間見える平和な頃の父親と娘二人が映った写真、窓の外の緑の風景に余韻と安らぎを覚えました。