定められた、絶望的に抗えない「運命」を乗り越えるというテーマの作品が韓国には非常に多いけど、これもそのひとつ。その運命が理不尽でもなんでも、それを乗り越えるのだという強い意志が今の韓国エンタメの潮流から感じられる。 作品としては、韓国はもちろん、世界中にはびこる「ネットリンチ」がもたらす不条理な死（ネットリンチを受けた人は自殺を選択せざるを得ない）をテーマにしている。だから地獄の死者は対象をただ焼き尽くすだけでなく、その前にボコボコにリンチする。そして対象者は必ずしも「罪人」とは限らない。単になんとなく疑わしい人や無実の人も次々に地獄に「呼ばれる」。SNSなどの「石を投げる行為」がこの作品での「地獄に呼ばれる」部分。 しかしラストでは、ここは「人間の世界なのだ」だとはっきりと断言され、命がけで守られ、救われた命が前に進んでいく様子には感動しかない。自ら死を選ばなくても生きていける、ということを示唆していて、絶望的な世界が最後には清々しくさえなる様子は、今の韓国エンタメの臨界点になっていると思う。