ポール・バーホーベンが監督を務めた2000年公開のサスペンス・ホラー。 H・G・ウェルズの小説『透明人間』を原案としつつも、世界観から作風まで「透明人間」を扱った他作品とはまたかなり異なります。まず決定的に違うのは最大の見所にして最も肝心な透明人間描写！当時の最新VFX技術を駆使したあの映像面だけでも楽しいです。特に、研究所で主人公が初めて透明人間となる場面はめちゃくちゃ印象的です。そして終盤ではこの透明人間設定を活かしまくった数々の惨劇がホラータッチで展開されます。派手なクライマックスも用意されており、最後の最後まで安心できませんでした。そして本作では「自由を手にし、完全な安全圏に立った人間が露わにする負の欲求」が見事に描かれています。透明となった主人公はドン引き必至の行動を取り続けますが、本作は彼のように呆れる程自己中心的であり”歩く承認欲求”みたいな人間は現実にもありふれてるという事や、自分にも少なからずこのような一面があるという事を突きつけられます。 これまでには無かった「元に戻すのが大変」という設定も主人公の弱い部分を突いてきますし、本作のテーマ性を最大限活かすナイスな新要素だと思います。全編に様々な工夫やアイデア、そしてブラックなユーモアが詰め込まれた楽しい作品でした。今我々が一番観るべきバーホーベン作品！ ケヴィン・ベーコンって本当に童顔。